生成AIの普及が進むなか、「事務派遣はなくなるのではないか」という声を耳にする機会が増えました。
定型業務の自動化が進み、コールセンターや事務センターなど同一業務を多数で処理する分野は、特に影響を受けやすいといわれています。
一方で、日本企業に多い「少量多種」の事務業務は、すぐに全面的に置き換わるわけではないとも指摘されています。
では、AI時代に事務派遣は本当に生き残れるのでしょうか。
今回は、派遣業界トップの動向を手がかりに、事務派遣の未来とリスキリングの意味を整理します。
AIが最初に置き換える領域
同一業務・大量処理型の仕事
AIが得意なのは、ルールが明確で反復性の高い業務です。
- データ入力
- 定型書類作成
- FAQ対応型のコール業務
- ルーティン型バックオフィス処理
これらは生成AIやRPAとの相性が非常に良い分野です。
特に「同じ業務を多数の人が行う」体制は、AI化の投資対効果が見えやすいため、企業にとって合理的な選択肢になります。
これは派遣社員だけでなく、正社員にも影響が及ぶ構造問題です。
すぐには消えない「日本型事務」
一方で、日本企業特有の業務構造もあります。
- 少量多種の処理
- 部門ごとの独自ルール
- 暗黙知に依存した業務
- イレギュラー対応の多さ
こうした環境では、現時点のAIは万能ではありません。
しかし、自律的に動く「AIエージェント」が低コストで普及すれば状況は変わります。
問題は「いつ」ではなく、「備えているかどうか」です。
派遣大手のパソナグループは、スタッフ向けにMicrosoft Copilot活用研修を提供しています。
企業側のAI人材ニーズは急増しており、AIを業務で使いこなせる人材の求人は前年の約2倍に拡大したといわれています。
初級スキルでは足りない
単なる操作レベルではなく、
- 業務プロセスをAI前提で設計できる
- 簡易アプリを作れる
- 自動化フローを組める
といった上級スキルまで到達すれば、希少性は高まります。
実際、AI活用が前提の人材は時給が約10%高いケースもあるといわれています。
これは単なるスキルアップではなく、労働市場でのポジション転換です。
「代替される側」か「活用する側」か
ここが最大の分岐点です。
AIは仕事を奪うのではなく、
「AIを使える人」と「使えない人」の格差を拡大させます。
- AIに業務を任せる人
- AIに業務を奪われる人
この違いは、同じ職種の中でも生まれます。
事務派遣という枠組み自体が消えるのではなく、
「AI前提型事務人材」へ進化できるかどうかが問われています。
税理士・FPとしての視点
これは他人事ではありません。
会計ソフトの自動仕訳、AIチャットによる税務相談、契約書レビューAI…。
専門職も同じ構造の中にいます。
事務派遣の議論は、
「専門職も例外ではない」という警鐘でもあります。
むしろ、
- AIを使って生産性を高める人材
- AIの限界を理解し判断できる人材
この二層構造が進む可能性が高いと考えています。
結論
AI時代に事務派遣は「なくなる」のではなく、「変質する」と考えるのが現実的です。
- 定型業務だけの人材は厳しい
- AIを前提に働ける人材は需要増
- リスキリングは選択肢ではなく前提条件
AIに代替されるか、AIを使う側に回るか。
その分岐点は、すでに目の前にあります。
労働市場は静かに「臨界点」を越えつつあります。
今後数年で、事務職の定義そのものが変わる可能性があります。
この変化をどう受け止め、どう備えるか。
それが、これからの働き方を左右します。
参考
日本経済新聞
労働臨界 AI時代、事務派遣は生き残れる?
パソナグループ 中尾慎太郎氏インタビュー記事
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

