公的年金の繰下げ受給は、老後資金設計の有力な選択肢です。
受給開始を遅らせることで、年金額は増額されます。
しかし、海外資産を保有している場合、年金繰下げは単なる「収入増加策」ではありません。
国際承継設計や相続税、納税資金設計とも密接に関係します。
本稿では、年金繰下げと国際承継設計の連動関係を整理します。
年金繰下げの基本
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、原則65歳から受給開始ですが、75歳まで繰下げが可能です。
繰下げることで、
- 年金額が増加する
- 生涯受給総額が増える可能性がある
というメリットがあります。
国際承継との接点
1 資産構成への影響
繰下げ期間中は年金を受け取らないため、生活費は他の資産から賄います。
海外資産を多く保有している場合、
- 国内流動資産を取り崩すのか
- 海外資産を取り崩すのか
で、資産構成が変わります。
結果として、相続時の財産構成に影響します。
2 相続税との関係
公的年金そのものは原則として相続財産ではありません。
しかし、
- 繰下げにより受給前に死亡した場合
- 未支給年金の扱い
などが論点となります。
繰下げ中に死亡した場合、受給総額が想定より少なくなるリスクもあります。
3 納税資金設計への影響
繰下げにより年金額が増えれば、将来の生活資金は安定します。
その分、
- 退職金や国内預金を温存
- 海外資産を承継資産として維持
という設計が可能になります。
逆に、繰下げ期間中に流動資産を過度に減らすと、納税資金不足のリスクが生じます。
海外資産を持つ場合の特有論点
1 為替とのバランス
海外資産は為替変動の影響を受けます。
年金は円建てです。
繰下げによって円建て収入を増やすことは、通貨分散の観点からも意味があります。
2 相続人の居住地
相続人が海外居住者の場合、
- 年金受給者死亡後の手続
- 税務調整
が絡みます。
繰下げ期間中に死亡した場合の影響も含めて検討します。
典型的な設計パターン
パターン1:繰下げ+海外資産維持型
年金を繰下げ、生活費は国内資産で対応。
海外資産は承継対象として温存。
→ 生活安定と承継資産維持を両立。
パターン2:繰下げ中に海外資産を整理
繰下げ期間中に海外資産を段階的に整理し、国内流動資産へ転換。
→ 納税資金を確保しつつ、年金増額を待つ。
パターン3:繰下げを選ばない場合
健康リスクや家族状況を踏まえ、65歳受給開始を選択。
→ 安定収入を早期確保し、海外資産の整理時期を調整。
中小企業オーナーの視点
オーナー経営者の場合、
- 退職金
- DC
- 海外法人持分
が絡みます。
年金繰下げは、
- 退職金受取時期
- 事業承継時期
- 海外資産整理時期
と連動させる必要があります。
単独判断では不十分です。
判断の軸
年金繰下げを承継設計に組み込む際は、
1 健康状態
2 流動資産の余裕
3 相続税試算
4 海外資産の流動性
を総合的に判断します。
結論
年金繰下げは、老後生活設計だけの問題ではありません。
海外資産を持つ場合、
- 資産構成
- 納税資金
- 相続タイミング
に影響を与えます。
重要なのは、年金・退職金・海外資産を三層で考え、時間軸を意識した設計を行うことです。
国際承継設計は、単なる分割計画ではなく、人生後半の資産戦略です。
参考
税のしるべ
「6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績、過去最多のCRS情報を受領」
2026年2月9日付
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
