60代後半になると、国際承継設計は「資産の分配」だけの問題ではなくなります。
年金、退職金、企業型DCやiDeCoなどの制度も含めた全体設計が必要になります。
海外資産を持つ経営者の場合、
- 海外資産
- 国内事業資産
- 年金・退職金
という三層構造をどう連動させるかが重要です。
本稿では、国際承継設計と年金・退職金を一体で考える視点を整理します。
三層構造で考える
承継設計を整理する際、次の三層で考えると分かりやすくなります。
第1層:年金
- 公的年金
- 企業年金
- 確定拠出年金(DC・iDeCo)
生活費の基礎を支える層です。
第2層:退職金・国内流動資産
- 退職金
- 国内預金
- 国内有価証券
納税資金や予備資金となる層です。
第3層:海外資産・事業資産
- 海外口座
- 海外法人持分
- 海外不動産
- 自社株
評価額は大きいが、流動性に課題がある層です。
なぜ連動が必要なのか
1 納税資金の原資
相続税は原則現金納付です。
海外資産が多い場合でも、実際の納税資金は、
- 退職金
- 国内流動資産
に依存することが多くなります。
2 課税タイミングの違い
年金や退職金は、受け取り方により課税時期が変わります。
- 一時金
- 年金形式
- 繰下げ
これらが相続時期と重なると、税負担構造が変化します。
3 為替変動の影響
海外資産は為替で評価額が変動します。
一方、年金は円建てが中心です。
通貨構造を考慮した設計が必要です。
典型的な設計課題
ケース1:海外資産中心型
海外法人持分や海外不動産が資産の大半。
→ 退職金や国内資産を納税資金の中核に位置づける設計が必要。
ケース2:退職金が大きい場合
退職金の受取方法により、課税構造が変わります。
相続時期との関係を考慮する必要があります。
ケース3:DC・iDeCoを多額に保有
DCは受け取り方法により税制が異なります。
- 一時金
- 年金形式
の選択が、承継設計と連動します。
実務設計のポイント
1 生活費と承継資産を分ける
年金は生活費の基盤として活用し、海外資産は承継対象として整理するなど、役割分担を明確にします。
2 納税資金の分散確保
退職金や国内預金を一定水準維持し、海外資産売却に依存しない構造を目指します。
3 相続人への配分バランス
- 経営を承継する者
- 生活安定を重視する者
相続人の役割に応じ、年金的資産と事業資産を分ける設計も検討します。
4 税務試算の一体化
- 相続税
- 退職所得課税
- 公的年金課税
を総合的に試算します。
単独制度ごとの検討では不十分です。
中小企業オーナー特有の視点
オーナー経営者は、
- 自社株
- 海外子会社
- 退職金
- DC
が交錯します。
特に、
- 退職金をいつ受け取るか
- 受取後の資産構成をどうするか
は、承継設計と直結します。
設計を始める適切な時期
60代後半は、
- 退職金の見通しが立つ
- 年金受給開始が現実化する
- 承継時期が具体化する
という点で、連動設計の適期です。
結論
国際承継設計は、海外資産だけの問題ではありません。
重要なのは、
1 年金で生活基盤を確保する
2 退職金で納税原資を整える
3 海外資産を承継対象として設計する
という三層連動の視点です。
海外資産を持つ経営者ほど、資産全体を構造的に再設計することが求められます。
承継は単なる分割ではなく、人生設計の最終調整です。
参考
税のしるべ
「6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績、過去最多のCRS情報を受領」
2026年2月9日付
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
