海外資産がある場合の納税資金設計―相続・追徴に備える実務整理

税理士
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海外資産は分散投資や事業展開の結果として自然に形成されることがあります。
しかし、税務上の問題が生じたとき、あるいは相続が発生したときに課題となるのは「納税資金をどう確保するか」です。

海外に資産があるということは、裏を返せば「すぐに国内で現金化できない可能性がある」ということでもあります。

本稿では、海外資産を持つ場合の納税資金設計の考え方を整理します。


なぜ納税資金設計が重要なのか

1 相続税は原則として現金納付

相続税は原則として現金一括納付です。
海外資産が多く、国内流動資産が少ない場合、納税資金の確保が問題になります。

2 税務調査後の追徴は短期対応が求められる

海外資産に関連する追徴税額が発生した場合、納付期限は比較的短期間です。

資産の所在が海外であることは、納期限の延長理由にはなりません。

3 徴収共助制度の存在

納付が滞れば、条約がある国では徴収共助の対象となる可能性があります。

資金設計は「支払わない前提」ではなく「支払える前提」で考えます。


海外資産の特性を整理する

納税資金設計の第一歩は、資産の性質を理解することです。

流動性の違い

  • 海外預金:比較的流動性が高い
  • 海外証券:市場環境に左右される
  • 海外不動産:換金に時間を要する
  • 海外未上場株式:流動性が低い

資産の種類ごとに現金化までの時間を把握します。


典型的なリスク構造

ケース1:海外法人持分中心

自社株と海外法人持分が資産の大半を占め、現金が少ないケース。

評価額は高くても、納税資金が不足する可能性があります。

ケース2:海外不動産偏重

海外不動産の評価額が大きく、国内資産が限られている場合。

売却に時間がかかり、納税期限に間に合わないリスクがあります。


実務上の設計ポイント

1 納税原資の見積もり

まず、相続税や想定追徴税額を試算します。

  • 現在の評価額ベースでの相続税試算
  • 海外資産を含めた総資産ベースの試算

数字を把握しなければ設計はできません。


2 国内流動資産の確保

海外資産を多く持つ場合でも、一定割合の国内流動資産を維持することが望ましいです。

  • 国内預金
  • 国内証券
  • 生命保険の活用

納税資金の即応性を確保します。


3 海外資産の段階的整理

すべてを維持する前提ではなく、

  • 一部売却
  • 持分整理
  • 配当政策の見直し

などにより、流動性を高める選択肢も検討します。


4 事業承継との整合

中小企業オーナーの場合、

  • 自社株
  • 海外子会社
  • 個人海外資産

が混在します。

自社株承継対策と海外資産整理を分離せず、全体設計で考える必要があります。


相続人側の視点

海外資産の情報が整理されていない場合、相続人は資産把握に時間を要します。

  • 口座情報
  • 取引履歴
  • 契約書

を生前に整理しておくことが、納税資金確保の前提です。


税務調査後の設計

追徴が発生した場合、

  • 分割納付(延納)の可能性
  • 物納の検討

などもありますが、海外資産は物納に適さないケースが多いです。

基本は現金化の計画です。


結論

海外資産があること自体は問題ではありません。
問題となるのは、納税資金の準備がないことです。

実務上重要なのは、

1 資産の全体像を把握する
2 想定税額を試算する
3 流動性を確保する
4 相続人と情報共有する

ことです。

国際的な情報交換と徴収共助制度が機能する現在、納税資金設計は「いざというとき」ではなく「平時から」の課題です。

海外資産を持つ経営者ほど、資産の質と流動性のバランスを意識した設計が求められます。


参考

税のしるべ
「6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績、過去最多のCRS情報を受領」
2026年2月9日付


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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