徴収共助制度の実務解説―海外資産はどこまで追われるのか

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

海外に資産があれば、日本の税金は回収できないのではないか。
そのような考え方は、もはや通用しにくくなっています。

租税条約等に基づく「徴収共助制度」は、国境を越えて税金を回収する仕組みです。令和6事務年度も、実際に徴収共助の要請が行われています。

本稿では、徴収共助制度の仕組みと実務上のポイントを整理します。


徴収共助制度とは何か

徴収共助制度とは、租税条約や税務行政執行共助条約に基づき、ある国の税務当局が他国に対して税金の徴収を依頼できる制度です。

具体的には、

  • 日本で確定した税金が未納である
  • 納税者の資産が海外に存在する
  • 条約上、徴収共助が認められている

という場合に、日本の国税庁が相手国の税務当局に徴収を要請します。

相手国は、自国の租税債権と同様の手続で徴収を行います。


どのような税金が対象になるのか

一般に、次のような税目が対象になります。

  • 所得税
  • 法人税
  • 相続税・贈与税
  • 消費税 等

条約ごとに対象税目は異なりますが、主要な国との条約では広範な税目が対象とされています。


実務の流れ

徴収共助の実務は、概ね次の流れで進みます。

1 日本で税額が確定する

更正や決定、修正申告などにより税額が確定し、滞納が発生します。

2 海外資産の存在が確認される

情報交換(CRSや要請に基づく情報交換等)により、海外口座や不動産などの存在が把握されます。

3 国税庁が徴収共助を要請

条約の手続に従い、相手国税務当局へ正式に要請します。

4 相手国で徴収手続が行われる

差押えや回収などの手続が、相手国法に基づいて実施されます。


実務上の重要ポイント

1 「課税」と「徴収」は別段階である

情報交換は課税段階の問題ですが、徴収共助は徴収段階の問題です。

課税を争わず放置すると、徴収段階で海外資産が対象となる可能性があります。

2 不服申立て中でも影響が及ぶ場合がある

条約や国内法の条件によっては、一定の確定性があれば要請が可能となるケースがあります。

争うべき論点がある場合は、早期に対応方針を整理する必要があります。

3 海外資産の移転はリスクを高める

徴収を回避する目的で資産を移動させた場合、悪質性が高いと評価される可能性があります。

結果として、延滞税や加算税に加え、刑事リスクまで波及することもあります。


よくある誤解

海外に移住すれば徴収されない

居住地の移転だけでは解決しません。条約がある国であれば、徴収共助の対象となる可能性があります。

海外法人名義なら安全である

実質的帰属が認定されれば、個人に帰属する資産として扱われる可能性があります。

少額なら対象にならない

制度上は金額による線引きはありません。実務上の優先順位はありますが、制度としては対象です。


徴収共助が示す実務環境の変化

かつては、

  • 課税段階で把握できるかどうか
  • 海外資産に実際に手が届くか

が問題でした。

現在は、

  • 情報は把握される
  • 条約があれば徴収も可能

という前提で考える必要があります。

国際課税は、課税から徴収まで一体で機能する体制に移行しています。


結論

徴収共助制度は、海外資産を用いた徴収回避を抑止するための制度です。

実務上重要なのは、

  • 課税段階での適正対応
  • 争うべき論点の見極め
  • 早期のリスク管理

です。

海外資産の存在そのものが問題なのではありません。
問題となるのは、申告・納付の適正性です。

国際的な情報共有と徴収体制の進展を前提に、税務管理を再設計することが求められています。


参考

税のしるべ
「6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績、過去最多のCRS情報を受領」
2026年2月9日付


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました