過去最多のCRS情報受領が示すもの―国際課税はどこまで進んだのか

税理士
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国税庁が公表した令和6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績によれば、日本居住者に関するCRS情報の受領件数が過去最多となりました。件数は約274万件、口座残高は約17兆7,000億円に達しています。

この数字は単なる統計ではありません。国際的な金融口座情報の透明化が着実に進み、海外資産の把握体制が大きく変化していることを示しています。

本稿では、情報交換制度の全体像と今回のポイント、そして実務上の含意について整理します。


租税条約に基づく3つの情報交換

租税条約等に基づく情報交換は、大きく次の3類型に分かれます。

1 自動的情報交換

一定の情報を定期的に自動で交換する仕組みです。代表例が以下です。

  • CRS情報(非居住者の金融口座情報)
  • 法定調書情報

今回、最も注目されたのがCRS情報です。

2 自発的情報交換

外国税務当局が調査等の過程で入手した有益な情報を、自主的に他国へ提供するものです。

3 要請に基づく情報交換

国内調査のみでは事実関係が解明できない場合に、相手国に情報提供を要請するものです。

この3本柱が、国際課税の基盤を形成しています。


過去最多となったCRS情報

日本が受領したCRS情報

  • 101カ国・地域から受領
  • 274万5,374件(前年比11.8%増)
  • 口座残高 約17兆7,000億円(前年比24.6%増)

内訳を見ると、

  • 個人口座 約272万件(残高 約9兆6,000億円)
  • 法人口座 約3万件(残高 約8兆1,000億円)

件数の大半は個人ですが、残高ベースでは法人も非常に大きな割合を占めています。

海外資産の把握は、もはや限定的なケースではありません。制度として完全に定着したと見るべきでしょう。

日本から提供したCRS情報

  • 84カ国・地域へ提供
  • 32万8,034件(前年比35.8%減)
  • 口座残高 約8兆1,000億円(前年比44.6%増)

件数は減少していますが、残高は大きく増加しています。単純な件数増減だけでなく、質的な変化も読み取る必要があります。


自発的情報交換の急増

自発的情報交換は1,781件と、前年度の2.3倍に増加しました。

これは、外国当局の調査過程で得られた情報が、日本の課税に有益と判断されたケースが増えていることを意味します。

国際的な情報連携がより機動的になっていることがうかがえます。


要請に基づく情報交換の動向

日本からの要請件数は505件で、前年度より減少しました。

地域別では、

  • アジア・大洋州 380件(全体の75%)
  • 北米・中南米 72件
  • 欧州・その他 53件

国別では、香港、韓国、中国、米国、シンガポールの順に多くなっています。

一方、外国税務当局から日本への要請は326件と増加しました。

双方向の協力体制が深化している状況が読み取れます。


徴収共助制度の活用

情報交換にとどまらず、滞納税の徴収段階でも国際協力が進んでいます。

徴収共助制度に基づく要請は、

  • 日本からの要請 15件
  • 日本が受けた要請 7件

海外資産を用いた徴収回避への対応が制度的に整備されていることを示しています。


実務への影響

今回の統計から、実務上次の点が確認できます。

1 海外口座は把握されないという前提は成立しない
2 個人だけでなく法人の海外口座も対象である
3 情報は自動だけでなく、調査過程でも共有される
4 徴収段階まで国際連携が及んでいる

特に富裕層や海外展開企業にとっては、開示・申告の適正性がこれまで以上に重要になります。

国際課税は「見つからない前提」から「前提として把握される」時代へ移行しています。


結論

令和6事務年度の情報交換実績は、国際課税体制が量的にも質的にも拡充していることを示しています。

CRSはもはや制度上の枠組みではなく、実効性を持ったインフラとなりました。

今後は、制度の存在を前提に、

  • 海外資産の申告適正化
  • 移転価格・PE認定リスクの整理
  • 国際的徴収リスクの管理

といった実務対応が求められます。

国際課税は「特別な人の問題」ではなくなりつつあります。透明化は既に現実です。その前提に立った税務管理が必要です。


参考

税のしるべ
「6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績、過去最多のCRS情報を受領」
2026年2月9日付

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という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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