仮想通貨に求められるサイバー対策の新段階――金融庁方針案から読み解く投資家保護の方向性

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暗号資産(仮想通貨)をめぐるサイバー攻撃は、もはや例外的な出来事ではありません。国内外で多額の流出事件が相次ぎ、仮想通貨市場そのものへの信頼を揺るがす事態が続いています。
こうした状況を受けて、金融庁は2026年2月、暗号資産交換業者に対するサイバーセキュリティー対策を強化する方針案を公表しました。本稿では、この方針案の内容と、その意味するところを整理します。


金融庁が示した「3本柱」の考え方

今回の方針案の特徴は、サイバー対策を単なる個別事業者の努力に委ねず、次の3層構造で整理した点にあります。

1つ目は交換業者による自助です。
必要な専門人員の確保や、外部監査の導入など、事務ガイドラインで求める水準を引き上げる方向が示されました。技術的な対策だけでなく、組織としての体制整備が重視されています。

2つ目は業界としての共助です。
自主規制機関による監査能力の向上や、サイバー攻撃に関する情報共有機関への積極的な参加が促されます。個社では把握しきれない脅威に、業界全体で対応する考え方です。

3つ目は当局による公助です。
金融庁自らが代表的な攻撃事例を分析し、攻撃手法や有効な対応策を交換業者に共有します。また、サイバーセキュリティー演習への参加を、3年以内にすべての交換業者に広げる方針も示されました。


規制強化だが「処分目的ではない」

注目すべき点として、金融庁は今回の方針について「これを踏まえて直ちに行政処分を行うものではない」と明言しています。
これは、罰則を前面に出す規制ではなく、市場全体の底上げと投資家保護を目的とした予防的対応であることを示しています。

もっとも、方針案が示す水準が、将来的に監督上の事実上の基準となる可能性は否定できません。交換業者にとっては、早期の対応が重要になると考えられます。


相次ぐ流出事件が背景にある

今回の方針案の背景には、国内外で相次いだ大規模な流出事件があります。
国内では2024年に大手交換業者から多額のビットコインが流出しました。海外でも2025年に世界的な取引所で巨額の仮想通貨が盗難に遭い、分散型金融(DeFi)サービスへの攻撃も明らかになっています。

こうした事件は、被害額の大きさだけでなく、「安全に管理されている」という前提そのものを揺るがしました。その結果、投資家の不信感が高まり、価格下落を招く要因にもなっています。


投資家にとって何が変わるのか

この方針案により、短期的に投資家の取引環境が劇的に変わるわけではありません。しかし、中長期的には以下の点が重要になります。

・交換業者の体制整備が進むことで、流出リスクが相対的に低下する可能性
・業界全体での情報共有により、同種の被害が繰り返されにくくなること
・「規制がある市場」としての信頼性が、投資判断の前提条件として明確になること

仮想通貨は価格変動リスクだけでなく、管理・運営リスクも内包している資産であることを、改めて意識する必要があります。


結論

金融庁の方針案は、仮想通貨を「成長途上の投機的資産」として放置するのではなく、金融商品として制度的に位置づけ直す動きの一環といえます。
サイバー対策の強化は、交換業者にとっては負担増となる一方で、市場の信頼回復には不可欠な要素です。

投資家にとっても、「価格」だけでなく「取引基盤の安全性」を含めて仮想通貨を評価する時代に入ったことを示す内容だといえるでしょう。


参考

・日本経済新聞「仮想通貨にサイバー対策 交換業者向け、人員確保や外部監査 金融庁案」(2026年2月11日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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