年金を受け取りながら働く場合に、必ず話題に上るのが「在職老齢年金」です。
この制度は、「働くと年金が減る制度」として理解されがちですが、仕組みの背景や考え方まで含めて整理すると、見え方は少し変わってきます。
高齢期の副業や就労を考える際、在職老齢年金は避けて通れない制度です。本稿では、具体的な金額や計算式ではなく、制度の成り立ちと考え方に焦点を当てて整理します。
在職老齢年金は「働くことへの罰」ではない
在職老齢年金は、一定の収入を得ながら年金を受給する場合に、年金額を調整する仕組みです。
この制度は、働くことを抑制するために設けられたものではありません。
本来の考え方は、「賃金と年金の両方を受け取る場合、その合計が一定水準を超えると、年金で調整する」というものです。
つまり、賃金と年金の役割分担を前提にした制度設計になっています。
「働いたら損をする制度」と捉えると、制度の意図を見誤りやすくなります。
年金は「生活保障」、賃金は「労働の対価」
在職老齢年金を理解するうえで重要なのは、年金と賃金の役割の違いです。
年金は、老後の生活を支えるための社会保障給付です。一方、賃金は、現在の労働に対する対価です。
両者を同時に受け取る場合、社会全体としては「生活保障としての年金の必要性がどの程度あるのか」を調整する考え方が働きます。
その結果、一定以上の賃金がある場合には、年金が減額される仕組みになっています。
この点を理解せずに「年金が削られる」とだけ捉えると、制度への違和感が強くなりがちです。
在職老齢年金は「就労形態」を問わない
在職老齢年金の調整は、副業かどうか、正社員かどうかといった働き方の名称では区別されません。
年金と報酬の合計関係が基準となります。
複数の仕事を掛け持ちしている場合でも、合計した収入が判断材料になります。
そのため、「副業だから影響は少ない」「短時間だから大丈夫」といった感覚だけで判断するのは危険です。
在職老齢年金は、働き方の形式よりも、結果としての収入構造を重視する制度です。
「減る年金」ではなく「繰り延べられる年金」と捉える
在職老齢年金によって減額された年金は、単純に失われるものではありません。
制度上は、一定の調整がかかることで、年金の支給時期や総額との関係が変わる構造になっています。
このため、在職老齢年金は「年金をもらえない制度」ではなく、「働いている間は年金の一部を後ろに回す制度」と理解した方が、実態に近い面があります。
短期的な受取額だけを見るのではなく、働く期間と年金の関係を時間軸で捉えることが重要です。
判断軸は「損か得か」ではない
在職老齢年金をめぐる議論では、「働いたら損か」「年金を減らされたら意味がない」といった声がよく聞かれます。
しかし、高齢期の就労は必ずしも金銭的な損得だけで判断するものではありません。
就労による収入、社会とのつながり、健康面への影響、生活リズムの維持など、複数の要素が絡み合います。
在職老齢年金は、その中の一要素にすぎません。
制度だけを切り取って判断すると、全体像を見失いやすくなります。
結論
在職老齢年金は、「働くと年金が減る制度」ではなく、年金と賃金の役割分担を前提にした調整の仕組みです。
高齢期の副業や就労を考える際には、制度の意図と全体像を理解することが欠かせません。
短期的な年金額の増減だけに注目するのではなく、
・どのくらい働くのか
・どのような生活を送りたいのか
・年金と就労収入をどう組み合わせるのか
といった視点から、在職老齢年金を位置づけることが重要です。
理解したうえで選択する働き方こそが、高齢期の安定につながります。
参考
・日本経済新聞 在職老齢年金・高齢期就労に関する解説記事
・厚生労働省 年金制度および高年齢者就業に関する公表資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
