社会保険料を下げるより「上げない」ために何を削るのか 現実的な社会保障改革の優先順位

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

社会保険料を下げてほしい、という声は多く聞かれます。しかし、これまで見てきたとおり、社会保険料を「明確に下げる」ことは現実的に極めて難しい状況にあります。
その一方で、もう一つの現実的な目標があります。それは、これ以上、社会保険料を上げないことです。

社会保障給付が増え続ける中で、保険料を上げないためには、どこかで支出を抑える必要があります。本稿では、理想論ではなく、現実的に削減対象となり得る領域を整理します。


削るべきでないものは何か

最初に確認しておきたいのは、「削るべきでないもの」です。
医療・介護・年金の中核的な給付、すなわち生命や生活の基盤を支える部分は、安易に削るべきではありません。

・重症患者への医療
・要介護状態にある人への介護サービス
・老後の最低限の所得保障

これらを削減すれば、社会保障制度そのものへの信頼が失われ、結果的に制度は立ち行かなくなります。


優先順位① 過剰給付・利用の是正

最も現実的な削減対象は、「本来必要性の低い給付や利用」です。

医療分野では、
・軽症でも繰り返される受診
・市販薬と同等の効能を持つ医薬品の保険適用
といった領域が指摘されています。

介護分野でも、
・自立度が比較的高い人への過度なサービス
・地域差が大きい給付水準
など、見直し余地は存在します。

これらは「給付の否定」ではなく、「必要性に応じた調整」です。


優先順位② 所得・資産に見合わない軽負担

次に検討すべきは、支払い能力があるにもかかわらず負担が軽い層への対応です。

現行制度では、高齢者という理由だけで、所得や資産に比べて自己負担が低く抑えられているケースがあります。
この構造を維持したままでは、現役世代の保険料上昇を止めることはできません。

年齢ではなく、
・所得
・金融資産
といった指標を踏まえた負担の見直しは、避けて通れない論点です。


優先順位③ 制度の重複と非効率

医療・介護・福祉の制度は、長年の積み重ねで複雑化しています。
結果として、
・似た制度が並立する
・窓口や手続きが分断される
といった非効率が生じています。

制度間の整理や連携を進めることで、給付の質を落とさずに支出を抑える余地があります。
地味ではありますが、長期的には大きな効果を持つ分野です。


削減効果には限界があるという前提

重要なのは、「削れば解決する」という過度な期待を持たないことです。
高齢化そのものが給付を押し上げている以上、削減努力だけで保険料上昇を完全に止めることは困難です。

現実的な目標は、
・上昇ペースを緩やかにする
・新たな上乗せ負担を相殺する
という水準です。


「削る議論」を避け続けた結果

これまでの社会保障改革では、負担増や給付削減が先送りされてきました。
その結果、調整はすべて社会保険料の引き上げという形で現役世代に集中してきました。

「削らない改革」は、結果的に
・保険料引き上げ
・手取り減少
という形で国民に負担を強いてきたとも言えます。


おわりに

社会保険料を下げることが難しい以上、現実的な目標は「これ以上上げない」ことです。
そのためには、給付の優先順位を明確にし、必要性の低い支出から見直す姿勢が欠かせません。

削ることは不人気な議論です。しかし、それを避け続ければ、最終的に最も負担を背負うのは現役世代です。
社会保障を持続させるためには、負担と給付の現実を直視し、避けてきた論点に向き合う必要があるのではないでしょうか。


参考

・日本経済新聞「社会保険料下げ、政権に試練」
・厚生労働省 社会保障審議会資料
・財務省 社会保障と財政に関する公表資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました