人民元連動ステーブルコイン規制が示す「通貨主権」の行方

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

暗号資産やブロックチェーン技術の進展により、ステーブルコインは国境を越えた決済手段として存在感を高めています。一方で、各国の中央銀行や規制当局は、法定通貨との関係をどう整理するかという難しい課題に直面しています。
2026年2月、中国人民銀行が発表した人民元連動ステーブルコインに関する新たな規制は、こうした問題に対する中国の明確なスタンスを示すものです。本稿では、この規制の内容と背景を整理し、日本や国際金融への示唆を考えます。

人民元連動ステーブルコインの海外発行を禁止

中国人民銀行と国家外貨管理局は、人民元に連動するステーブルコインについて、当局の承認を得ないまま海外で発行する行為を禁止しました。対象は個人だけでなく法人にも及びます。
ステーブルコインは価格の安定性を特徴とし、法定通貨を裏付けとする点で、単なる投機対象の暗号資産とは異なります。中国当局は、こうした性質から、ステーブルコインが法定通貨の機能を一部代替し得る存在であると位置づけています。

通貨主権への強い警戒感

今回の通知で特徴的なのは、ステーブルコインを通貨主権に関わる問題と明確に位置づけた点です。
人民元に連動するデジタル決済手段が、当局の管理を離れて海外で発行・流通すれば、資本移動の管理や為替安定に影響を及ぼす可能性があります。中国が資本規制を重視してきた歴史を踏まえると、この判断は一貫したものといえます。

仮想通貨全般への厳格姿勢の再確認

通知では、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産について、法定通貨と同等の法的地位を持たないことを改めて強調しています。
決済や取引への利用、関連サービスの提供は違法な金融活動に該当するとされ、2021年に全面禁止とした方針が再確認されました。ステーブルコインだけでなく、暗号資産全体を通じた統制強化の一環と位置づけられます。

国際的な動きとの対比

興味深いのは、同時期に他地域では異なる動きが見られる点です。日本では改正資金決済法により、一定の要件のもとでステーブルコインの発行が認められています。また、香港では発行業者に免許を付与する制度が整備されつつあります。
米国では、実物資産をトークン化する仕組みが金融市場に組み込まれ始めています。中国の規制は、こうした国際的な潮流と距離を取り、国家主導でデジタル通貨を管理する姿勢を鮮明にしています。

結論

人民元連動ステーブルコインの海外発行禁止は、技術そのものを否定するというより、通貨主権と金融秩序を最優先する中国の政策判断を示しています。
ステーブルコインは利便性の高い決済手段である一方、法定通貨と密接に結びつくがゆえに、各国の金融政策や規制哲学が色濃く反映されます。今後、デジタル通貨を巡る国際的な制度設計は、技術競争だけでなく、通貨主権をどう守るかという政治・経済の問題として、より重要性を増していくと考えられます。

参考

日本経済新聞
人民元連動ステーブルコイン、承認なき海外発行禁止
2026年2月7日 夕刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました