消費税は本当に逆進的なのか――「逆進性」という言葉の誤解を整理する

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消費税を巡る議論では、「消費税は逆進的だから問題だ」という指摘が頻繁に登場します。
特に、食品の消費税ゼロや税率引き下げの根拠として、この逆進性が強調される場面は少なくありません。

しかし、「逆進的」という言葉が何を意味しているのか、
そして、消費税のどの部分が本当に問題なのかは、必ずしも整理されていません。
本稿では、消費税の逆進性を冷静に分解し、どこに課題があり、どこに誤解があるのかを考えます。

逆進性とは何を指しているのか

税制における逆進性とは、
所得が低い人ほど、所得に対する税負担の割合が高くなる
という性質を指します。

消費税は、所得の多寡に関係なく同じ税率が課されるため、
所得に占める消費税負担の割合を見ると、低所得層ほど重く見える傾向があります。
この点だけを見れば、消費税に逆進性があるという指摘は、形式的には正しいと言えます。

「消費税だけ」を切り出すと見誤る

ただし、ここで注意すべきなのは、
逆進性は消費税単体で評価すべきものではない、という点です。

税と社会保障は、本来セットで設計されています。
日本では、消費税収の大半が年金、医療、介護、子育てといった社会保障に充てられています。

これらの給付は、

  • 高齢者
  • 子育て世帯
  • 低所得層
    ほど受益が大きい構造になっています。

税の負担だけを見て「逆進的」と評価するのは、
給付という反対側の要素を切り落とした議論だと言えます。

食品は本当に「逆進性の原因」なのか

食品は生活必需品であり、
低所得層ほど支出に占める食品費の割合が高いのは事実です。
この点から、食品の消費税が逆進性の象徴として語られることが多くなっています。

しかし、食品の消費税をゼロにした場合、
恩恵を最も多く受けるのは「食品を多く購入する層」です。
必ずしも低所得層だけが対象になるわけではありません。

結果として、

  • 高所得層にも同額、あるいはそれ以上の減税効果が及ぶ
  • 多額の財源を使う割に、支援が分散する
    という構造になります。

軽減税率は逆進性対策として十分か

日本では、食品に軽減税率(8%)を適用することで、
消費税の逆進性を緩和する仕組みが導入されています。

しかし、軽減税率は、

  • 事業者の事務負担が重い
  • 対象品目の線引きが複雑
  • 逆進性対策としての効果が限定的
    といった課題を抱えています。

逆進性を理由に制度を複雑化している割に、
効果が分かりにくいというのが実務上の評価です。

本当に見るべきは「負担と給付の全体像」

消費税の逆進性を考える際に重要なのは、
税負担と社会保障給付を合わせた「純負担」です。

  • 消費税を多く払っていても
  • 医療や介護、年金、子育て支援でそれ以上の給付を受けていれば

その世帯にとって、制度全体が逆進的とは言えません。

逆に、給付が届いていない層があるとすれば、
問題は税率ではなく、給付の設計にある可能性があります。

結論

消費税は、単体で見れば逆進的に見える側面があります。
しかし、社会保障と一体で考えた場合、
必ずしも「不公平な税」とは言い切れません。

逆進性を理由に消費税率を下げることが、
本当に必要な人への支援につながるのか。
あるいは、給付の仕組みを見直した方が合理的なのか。

消費税の是非を考える際には、
「逆進的かどうか」という一言で結論を出すのではなく、
負担と給付の全体像を見る視点が欠かせません。

参考

・日本経済新聞「食品消費税ゼロなら、地方税収2兆円減 保育・介護サービスに影響」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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