衆院選を前に、与野党が相次いで打ち出している「食品の消費税ゼロ」や消費税減税策は、家計の負担軽減策として注目を集めています。
しかし、その一方で、自治体の財政運営に深刻な影響を及ぼす可能性があることは、あまり語られていません。
本稿では、食品消費税ゼロが地方税収にどのような影響を与え、結果として私たちの身近な行政サービスにどのような波及が生じるのかを整理します。
消費税は「国の税金」だけではない
消費税は国税というイメージが強いですが、実際にはその約4割が地方自治体の財源となっています。
現在の消費税率10%のうち、2.2%分は地方消費税として都道府県に配分され、さらにその半分が市町村に交付されます。
食品に適用されている軽減税率8%でも、1.76%分が地方消費税として地方に回っています。
食品ゼロで地方税収は年2兆円減
仮に食品の消費税がゼロになれば、国全体で約5兆円規模の税収減が生じるとされています。
このうち、地方に配分されている分を含めると、自治体全体では年2兆円近い減収になる見通しです。
北海道では年間約480億円の減収になるとの試算も示されており、多くの都道府県で数百億円規模の影響が想定されています。
地方財政は「自由に削れない」構造
自治体の歳出の多くは、法令などに基づき支出が義務付けられた「義務的経費」です。
知事や市町村長が裁量で使途を決められる予算は、全体の1割前後に過ぎません。
例えば長野県では、一般財源ベースで政策的に使える経費は歳出の約9%にとどまっています。
そのため、税収が大きく減少した場合、真っ先に削られるのは「独自施策」や「将来への投資」になりがちです。
影響を受けるのは保育・介護だけではない
消費税収は社会保障分野への充当が原則とされており、自治体が受け取る分の7割以上は、保育、介護、高齢者福祉などに使われています。
代替財源が確保されなければ、公営の介護サービスや保育所の運営に支障が出る可能性があります。
さらに、社会保障を削れない場合には、水道、道路、公共施設といった身近なインフラの補修や更新が後回しになるおそれも指摘されています。
「補填すればよい」は簡単ではない
過去には、定額減税などによる地方の減収分を、国が臨時の交付金で補填した例もあります。
しかし、恒久的な消費税減税を行う場合、毎年安定的に代替財源を確保し続ける必要があります。
現時点では、多くの政党が具体的な財源の裏付けを示しているとは言い難く、自治体側からは慎重な議論を求める声が相次いでいます。
結論
食品消費税ゼロは、短期的には家計支援として歓迎されやすい政策です。
しかし、その裏側では、地方財政に年2兆円規模の穴を開け、保育・介護、さらにはインフラ整備など、私たちの生活に直結するサービスの質と量を左右する問題をはらんでいます。
消費税減税を議論する際には、「誰の負担が軽くなり、どこにしわ寄せが行くのか」を、国と地方の関係も含めて丁寧に考える必要があります。
減税か否かではなく、持続可能な財源設計をどう描くのかが、今後の最大の論点と言えるでしょう。
参考
・日本経済新聞「食品消費税ゼロなら、地方税収2兆円減 保育・介護サービスに影響」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
