第4回 2割特例・経過措置・保存要件 インボイス後の申告でミスが出るところ総点検

税理士
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インボイス制度をきっかけに課税事業者になった方にとって、2割特例は申告負担を下げる有力な選択肢です。一方で、対象者の要件を外していたり、免税事業者等からの仕入れの経過措置を誤ったりすると、税額が大きくズレます。第4回は、2割特例と経過措置、帳簿・請求書の保存要件を「ミスが出る順」に整理し、最後に提出前チェックまでまとめます。

1 2割特例の骨格は「売上税額の20%を納付」

2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった方について、仕入税額控除を「売上税額の80%」とみなす仕組みです。
その結果、納付税額は概ね「売上税額の20%」になります。

重要なのは、仕入の実額計算が不要になる一方、売上は税率別(8%・10%)に区分して集計する必要がある点です。ここは簡易課税と似ていますが、性格は異なります。

2 ミニ計算:2割特例の納付イメージ

【前提】
10%の税抜売上が100万円 → 売上税額10万円
(単純化のため仕入等は考えず、2割特例の考え方だけ示します)

【計算】

  • 特別控除税額:売上税額10万円 × 80% = 8万円
  • 納付税額:10万円 − 8万円 = 2万円

売上税額が増減すれば、納付もそれに連動して増減します。申告の考え方が「売上中心」になるのが2割特例の特徴です。

3 2割特例の対象外になりやすいケース

2割特例は誰でも使えるわけではありません。代表的には次のような場合、インボイス登録と関係なく課税事業者になっているため対象外となります。

  • 基準期間または特定期間の課税売上高が1000万円超
  • 調整対象固定資産や高額特定資産を取得し、一般課税で仕入控除を行った
  • 相続により課税事業者となった
  • 課税期間を短縮する特例を選択している

また、2割特例の可否は課税期間ごとに判定します。前年は対象外でも令和7年分は対象になる、ということが起こり得ます。ここは「前年の結論をそのまま持ち越さない」姿勢が安全です。

4 免税事業者等からの仕入れは「80%控除」の経過措置がある

一般課税で仕入税額控除をする場合、原則として帳簿とインボイス等の保存が必要です。
ただし、免税事業者や消費者など、インボイス発行事業者以外からの課税仕入れについては、一定期間の経過措置があります。

  • 令和5年10月1日から令和8年9月30日まで:仕入税額相当額の80%
  • 令和8年10月1日から令和11年9月30日まで:仕入税額相当額の50%

令和7年分は「80%」の期間です。ここを50%で処理してしまうと控除が小さくなり、納付が過大になります。実務では、帳簿に経過措置の適用を受ける旨の記載が求められる点も含め、ルール化しておくと事故が減ります。

5 ミニケース:免税事業者からの仕入れ(10%)を税込11万円で購入した

【前提】
免税事業者から税込11万円(10%相当)の課税仕入れをした。
税額相当は、11万円のうち10%分=1万円相当と考えます(イメージのため単純化)。

【経過措置(80%)】
控除できるのは税額相当1万円の80% → 8000円相当です。
控除ゼロでも満額でもなく「一定割合」になるのがポイントです。

実務では、積上げ計算か割戻しか、帳簿の処理方法などにより手続が絡みますが、重要なのは「令和7年分は80%」という骨格を押さえることです。

6 帳簿のみで控除できる取引、少額特例

インボイス制度後でも、一定の取引は帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。公共交通機関の運賃(一定額未満)、自販機購入など、代表例は先に押さえておくと処理が安定します。
加えて、条件を満たす事業者について税込1万円未満の課税仕入れは帳簿のみでよい(少額特例)といった例外もあります。ここは「対象者要件」と「金額判定のしかた(1回の取引の税込総額で判定)」がポイントになります。

7 2割特例より一般課税・簡易課税が有利になる典型

2割特例は多くの小規模事業者にとって有利になりやすい一方、例外もあります。

  • 多額の設備投資があり、一般課税なら還付になり得る
  • 卸売業など、簡易課税のみなし仕入率が高く、簡易課税の方が納付が少なくなる

ここは「簡単だから2割特例」と決め打ちせず、少なくとも設備投資の有無、業種区分(みなし仕入率が高いか低いか)を確認するのが実務的です。

8 提出直前チェック(保存版)

最後に、提出前に確認したい項目を並べます。

  • 自分が申告対象か(インボイス登録の有無、基準期間・特定期間)
  • 課税期間の範囲(年途中で課税事業者なら期間を切り出したか)
  • 売上・仕入を8%と10%で区分集計したか
  • 非課税売上や対象外取引を課税売上に混ぜていないか
  • 2割特例の対象外要件に当てはまっていないか
  • 免税事業者等からの仕入れの経過措置を、令和7年分は80%として扱っているか
  • 帳簿・請求書等の保存要件(例外や少額特例を含む)を満たしているか
  • 簡易課税・一般課税・2割特例の選択が、設備投資や業態の実態と矛盾していないか

結論

令和7年分の消費税申告は、2割特例と経過措置の理解がミス防止の中心になります。特に「令和7年分は80%控除の期間」「2割特例は対象外要件がある」「保存要件と例外がある」の3点を押さえるだけで、申告の事故は大きく減ります。最後はチェックリストで機械的に確認し、期限(令和8年3月31日)までに確実に提出・納付する流れを作ることが実務の要です。

参考

  • 税のしるべ 森田修「令和7年分消費税の確定申告のポイント」2026年2月2日
  • 国税庁「2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き」
  • 国税庁「令和7年分 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き(個人事業者用)」
  • 令和8年度税制改正大綱(2割特例から簡易課税への移行措置に関する記載)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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