第3回 税額計算の実務 積上げ計算・割戻し計算と一般課税・簡易課税の分かれ目

税理士
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消費税は、売上にかかる税額から、仕入などで負担した税額を差し引いて納付するのが基本です。ただし計算の入り口で「積上げ計算にするか、割戻し計算にするか」を誤ると、帳簿の集計と申告書の整合が取れなくなります。第3回では、計算方法の選び方、一般課税と簡易課税の違い、そして数字が動くミニケースで理解を固めます。

1 売上税額は「積上げ」か「割戻し」

売上税額の計算には2つの考え方があります。

  • 積上げ計算:請求書・レシート等に記載された消費税額等を積み上げる
  • 割戻し計算:税込売上を税率ごとに合計し、税率で割り戻して税額を出す

売上税額は、一定の範囲で併用できることがありますが、仕入税額側は制限が強く、組み合わせのルールに注意が必要です。

2 仕入税額は「併用不可」など制限が多い

仕入税額は、積上げ計算と割戻し計算を併用できません。
さらに、仕入税額を割戻しで計算できるのは、売上税額で積上げ計算をしていない場合に限られるなど、選択の組み合わせにルールがあります。

ここで実務的な結論はシンプルで、「自分の帳簿が税額を明確に積み上げる設計になっているか」を基準に決めるのが安全です。請求書・インボイスの税額をきちんと管理しているなら積上げが自然ですし、税込金額の集計が中心なら割戻しが馴染むケースがあります。

3 ミニ計算:10%と8%の割戻し(基本の型)

【前提】

  • 10%の税込売上:110万円
  • 8%の税込売上:108万円

【計算】

  • 10%:税抜 110万円 ÷ 1.10 = 100万円、税額 10万円
  • 8%:税抜 108万円 ÷ 1.08 = 100万円、税額 8万円

割戻しは、税率ごとに分けてから計算するのが鉄則です。混ぜて割り戻すと、税額がずれます。

4 一般課税は「仕入税額控除」が中心になる

一般課税は、仕入税額控除をどこまで取れるかで納付税額が決まります。
一定の条件(課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上など)を満たすと、原則として仕入税額の全額を控除できる整理になります。一方で、条件を満たさない場合は、個別対応方式や一括比例配分方式などの計算が必要となり、申告の難度が上がります。

また、居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限など、投資・不動産関連の論点も一般課税で効いてきます。該当する方は、早い段階で「控除できない仕入があるか」を棚卸しするのが安全です。

5 簡易課税は「みなし仕入率」で控除額を決める

簡易課税では、実際の仕入税額を積み上げず、売上に係る税額にみなし仕入率を掛けて控除税額を計算します。
そのため、仕入の集計負担は軽くなりますが、売上を事業区分に分ける必要があります。取引ごとに判定する点も重要です。兼業の場合、区分が曖昧だとみなし仕入率がズレて税額が変わります。

6 ミニケース:同じ売上でも「一般課税」と「簡易課税」で納付が変わる

【事例】
10%の税抜売上が100万円、売上税額は10万円とします(計算は単純化)。
仕入(10%)の税抜が70万円、仕入税額は7万円とします。

  • 一般課税(単純な差引き):10万円 − 7万円 = 納付3万円
  • 簡易課税(みなし仕入率が仮に50%とすると):控除は10万円 × 50% = 5万円 → 納付5万円

この例では一般課税の方が納付が少なくなります。逆に、仕入が少ない業態では簡易課税が有利になりやすい、という基本の見方ができます。要するに「自分の業態は仕入が多いのか少ないのか」を数字で把握することが大切です。

7 還付の可能性を見落とさない

一般課税で、仕入税額が売上税額を上回ると還付になる可能性があります。設備投資などが大きい年はここが効きます。
簡易課税や2割特例は、通常、還付が生じにくい仕組みです。申告を簡単にしたい気持ちは自然ですが、還付可能性がある年は「簡単さ」だけで選ぶと損になることがあります。

結論

税額計算は、積上げと割戻しの選択から始まり、その後に一般課税・簡易課税・2割特例のどれで申告するかが乗ってきます。数字が動くのは、結局「仕入税額をどの考え方で控除するか」です。ご自身の帳簿の作り方と、仕入の多寡、設備投資の有無をセットで見て、最も事故が少ない選択をすることが実務の近道です。

参考

  • 税のしるべ 森田修「令和7年分消費税の確定申告のポイント」2026年2月2日
  • 国税庁「令和7年分 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き(個人事業者用)」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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