年金世代にとっての安全資産とは何か――守るべきものが変わると、選ぶ資産も変わる

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現役時代と年金受給後とでは、資産に求められる役割が大きく異なります。
現役時代は「増やす」ことが重要でしたが、年金世代に入ると、最大のテーマは「守りながら使う」ことに移ります。その中で、改めて問われるのが「安全資産とは何か」という問題です。
インフレが進行する現在、従来の感覚のまま安全資産を選び続けることが、本当に老後の安心につながるのかを考える必要があります。

年金世代が守るべき三つのもの

年金世代にとって安全資産を考える際、守るべき対象は大きく三つあります。
一つ目は、日々の生活費を賄うための流動性です。必要なときにすぐ使える資金が確保されていなければ、どれほど資産額があっても安心できません。
二つ目は、長生きリスクへの備えです。想定よりも長く生きる場合でも、資金が尽きない構造が求められます。
三つ目は、インフレによる購買力の低下です。年金給付が物価上昇に十分追いつかない局面では、資産側で補完する必要があります。

預貯金は「安全」だが「十分」ではない

預貯金は元本割れのリスクが低く、流動性にも優れています。年金世代にとって、生活費の一定期間分を預貯金で確保することは不可欠です。
ただし、低金利下で物価が上昇する環境では、預貯金だけで資産全体を守ることは難しくなります。名目額が減らなくても、実質的な価値は徐々に目減りしていくからです。
預貯金は「基盤」として重要ですが、それだけで完結する安全資産ではありません。

金は「使わないための安全資産」

金(ゴールド)は利息や配当を生みませんが、年金世代においては、使わない部分の資産を守る役割を担います。
金の価値は特定の通貨や制度に依存せず、インフレや通貨不安が強まる局面で相対的に評価されやすい特性があります。
生活費として日常的に取り崩す資産ではありませんが、「いざというときの価値保存手段」として、資産全体の安定性を高める役割を果たします。

価格変動よりも「取り崩しやすさ」を重視する

年金世代にとって、価格変動そのものより重要なのは、どの資産から、どの順番で取り崩せるかという点です。
短期的な値動きがあっても、使う予定のない資産であれば、必ずしも問題にはなりません。一方、生活費に充てる資産が値下がりすると、心理的な不安が大きくなります。
安全資産とは、値動きの小ささだけでなく、生活設計と整合的に使えるかどうかで判断すべきものです。

年金世代の安全資産は「役割分担」で考える

年金世代における安全資産は、単一の資産で完結させるものではありません。
短期の生活費は預貯金で確保し、中長期の購買力維持は金や実物資産で補完し、年金収入と組み合わせて全体のバランスを取ることが重要です。
安全資産とは、リスクをゼロにするものではなく、生活の不確実性を管理可能な範囲に抑えるための仕組みといえます。

結論

年金世代にとっての安全資産とは、「元本が減らない資産」ではなく、「老後の生活を安定して支えられる資産」です。
流動性、長生きリスク、インフレへの耐性という三つの視点を持ち、それぞれに役割を持たせることで、初めて安心感が生まれます。
安全資産の選択は、資産運用の問題であると同時に、老後の暮らし方そのものを映し出すものなのかもしれません。

参考

・日本経済新聞「『2つのゴールド』で明暗 金、根強い買い/仮想通貨、資金引き揚げ」
・日本経済新聞「インフレ時代の安全資産再考」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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