金(ゴールド)とビットコインは、長らく「価値の保存手段」という共通の文脈で語られてきました。特にビットコインは、発行上限が定められている点などから「デジタルゴールド」と呼ばれ、金の代替資産として評価される場面も多くありました。
しかし足元の市場では、この二つの「ゴールド」の動きに明確な差が生じています。金は急落後も押し目買いが入り、上昇基調を維持している一方で、ビットコインは下落が続き、資金流出が止まりません。
この違いは一時的な相場の気分なのでしょうか。それとも、投資家が両者を根本的に別の資産として見直し始めた結果なのでしょうか。
金は「信認」を取り戻した
2026年1月末、金とビットコインはともに急落しました。米国の金融政策を巡る観測が変化し、リスク資産全般に調整が入ったためです。
しかし、その後の動きは対照的でした。金は2割程度下落した局面で一気に買いが入り、短期間で水準を切り上げました。背景には、中央銀行や機関投資家による継続的な需要があります。
金は無利息資産でありながら、国家の信用や通貨制度への不安が高まる局面では、最終的な価値の拠り所として選ばれてきました。今回もその性質が改めて確認された形です。
ビットコインは「代替」ではなかった
一方のビットコインは、急落後も明確な押し目買いが入りませんでした。ETFからの資金流出が続き、最高値から大きく水準を切り下げています。
ビットコインは発行量が限定されている点で金と似ていますが、価値の裏付けは市場参加者の期待に大きく依存しています。加えて、ハッキングや取引所トラブル、ステーブルコインを巡る不安など、制度面・信頼面の課題が繰り返し顕在化してきました。
その結果、リスク回避局面では「守りの資産」ではなく、「まず売られる資産」として扱われつつあることが、今回の値動きから読み取れます。
仮想通貨業界自身の選択
象徴的なのは、ステーブルコイン大手が準備資産として金の保有を増やしている点です。かつてはビットコインがその役割を担うと考えられていましたが、実務的な判断として金が選ばれました。
これは、価格変動の大きさだけでなく、最終的な信用の置き所として金が依然として優位であることを示しています。仮想通貨業界の内部からも、「金とビットコインは同列ではない」という評価が表に出始めたといえます。
金も「万能」ではない
もっとも、金が完全な安全資産に戻ったわけではありません。足元では先物市場で取引中断が相次ぐなど、投機資金の影響も強まっています。
ただし、乱高下しながらも長期的なトレンドが維持されている点は、ビットコインとの大きな違いです。資金が逃げ場を探す中で、「どこに残るのか」という選別が始まっていると考えられます。
結論
今回の相場は、「金」と「デジタルゴールド」が同じ性質の資産ではないことを改めて浮き彫りにしました。
金は通貨や制度への不安が高まる局面で選ばれる「最終的な価値保存手段」としての地位を維持しています。一方、ビットコインは成長資産・投機資産としての側面が強く、守りの局面では信認を得にくい存在になりつつあります。
今後も両者が同じ方向に動く場面はあるかもしれません。しかし、資金の性格や市場環境が変わったとき、同じ「ゴールド」という言葉で括ることは、ますます難しくなっていくでしょう。
参考
・日本経済新聞「『2つのゴールド』で明暗 金、根強い買い/仮想通貨、資金引き揚げ」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
