終身保険は「一生涯の保障」をうたう代表的な生命保険です。
しかし近年、その前提そのものを見直さざるを得ない状況が生まれています。
契約者の長寿化により、保険会社が商品設計時に想定していた年齢を超えて生存するケースが、現実的な問題として浮上してきました。
日本経済新聞では、終身保険において「108歳超え」に備える動きが大手生命保険会社で進んでいることが報じられました。
人生100年時代といわれる中で、保険制度がどこまで対応できているのかを考える必要があります。
終身保険における「最終年齢」という考え方
終身保険には満期がなく、原則として死亡するまで保障が続きます。
一方で、商品設計上は「最終年齢」と呼ばれる上限年齢が設定されています。
この最終年齢は、生命保険会社が用いる生命表に基づいて定められています。
生命表とは、年齢ごとの死亡率などを整理した統計表で、一定年齢に達すると生存者がほぼゼロになることを前提にしています。
近年の生命表では、最終年齢は以下のように推移しています。
- 1996年算定:男性106歳、女性109歳
- 2018年算定:男性109歳、女性113歳
この数字からも、長寿化が着実に進んでいることが分かります。
なぜ「108歳超え」が問題になるのか
終身保険の多くは「終身払い型」です。
約款に特段の定めがない限り、被保険者が生存している限り保険料の支払いは続きます。
ところが、商品設計時の想定年齢を超えて生存した場合、次のような問題が生じます。
- 保険会社が想定以上に保険料を受け取ることになる
- 契約者にとって「払い過ぎ」と感じられる状況が生じうる
- 約款上の整理が不十分なままでは、トラブルの火種となる
実際には、現時点で大手生保4社に該当する事例はないとされていますが、100歳超の人口は急増しています。
将来の紛争を未然に防ぐため、商品改定の検討が進められているのです。
保険料徴収停止という新たな対応
報道によると、大手生命保険会社では、一定年齢を超えた場合に「保険料の徴収を停止する」仕組みを検討しています。
保障自体は維持したまま、保険料負担のみを止める考え方です。
ただし、この対応には課題もあります。
- 約款変更には原則として契約者の同意が必要
- 契約件数が膨大で、事務負担が非常に大きい
- 海外にも明確な先行事例が少ない
そのため、約款変更以外の方法も含め、業界全体で手探りの状態が続いています。
長寿化が突きつける金融制度全体の課題
今回の終身保険の問題は、保険業界に限った話ではありません。
高齢者の資産運用、認知症への備え、金融商品の販売ルールなど、従来の制度や慣行が長寿化に対応しきれなくなっています。
金融機関では、高齢者への積極的な商品販売を控える動きが一般化していますが、
一方で、高齢であってもリスクを理解したうえで運用を望む人も少なくありません。
年齢だけで一律に線を引くのではなく、
判断能力や資産状況に応じた対応が求められる時代に入っています。
結論
終身保険は「一生涯の保障」という言葉どおり、長年安心の象徴とされてきました。
しかし、人生100年時代が現実となった今、その前提条件そのものを見直す局面に差しかかっています。
108歳を超えて生存することが「想定外」ではなくなりつつある時代において、
保険制度もまた、静かにアップデートを迫られています。
契約者にとっても、「終身」という言葉の意味を改めて確認し、
保障内容や保険料負担を長期視点で捉え直すことが重要になってきているといえるでしょう。
参考
・日本経済新聞「終身保険『108歳超え』に備え 大手生保、契約者長寿化で商品見直し」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

