暗号資産取引は、長らく国境を越えた把握が難しい分野とされてきました。海外取引所の利用やウォレット間移動により、税務当局が実態をつかみにくいという認識が、投資家側にも広がっていたためです。
しかし、令和8年1月から始まる国際的な情報交換制度により、この前提は大きく変わります。暗号資産取引に関する情報が、各国の税務当局間で自動的に交換される仕組みが本格的に動き出すからです。
暗号資産等報告枠組み(CARF)とは何か
CARF(Crypto-Asset Reporting Framework)は、暗号資産等を利用した脱税リスクの高まりを受け、OECDにおいて令和4年に策定・公表された国際基準です。
この枠組みでは、暗号資産交換業者などが非居住者の取引情報を自国の税務当局に報告し、その情報を租税条約等に基づいて各国間で自動的に交換することが前提となっています。
従来の金融口座情報を対象とするCRS(共通報告基準)では十分にカバーできていなかった暗号資産取引について、国際的な網をかける制度と位置づけられます。
日本での施行スケジュール
日本では、このCARFを実施するための法整備が令和6年度税制改正で行われ、令和8年1月1日から施行されます。
具体的な流れは次のとおりです。
- 令和8年から、暗号資産交換業者等が対象取引の特定手続きを開始
- 令和9年に、国税庁が令和8年分の取引情報を受領
- その後、各国の税務当局との間で自動的情報交換を開始
令和8年1月1日時点で、日本とCARFに基づく情報交換を行うことをコミットしている国・地域は76に及びます。主要国の多くが参加することから、実効性は高いといえます。
要請に基づく情報交換との併用
国税庁は、CARFによる自動的情報交換に加え、従来から行っている「要請に基づく情報交換」も引き続き活用するとしています。
これは、特定の納税者について疑義が生じた場合に、相手国の税務当局に個別に情報提供を求める仕組みです。
実際、令和6事務年度には、国外の暗号資産交換所を利用していた個人投資家について、要請に基づく情報交換により多額の申告漏れが把握された事例が公表されています。
本人が国外取引を否定していても、交換業者側の記録から事実関係が明らかになる点は、制度の現実的な運用を示しています。
投資家・納税者への影響
この制度開始により、海外取引所を利用していれば申告しなくても分からないという認識は、もはや通用しなくなります。
暗号資産取引は、国内外を問わず、将来的に税務当局が把握する前提で整理・申告する必要があります。
特に注意すべき点としては、次のようなものが挙げられます。
- 海外取引所を含めた年間損益の通算
- 日本円換算の方法と時点の整理
- 申告していない過去分取引の確認
CARFは、申告漏れを発見するための制度であると同時に、正しく申告している人とそうでない人の差を明確にする制度ともいえます。
結論
令和8年から始まるCARFに基づく国際的な自動情報交換は、暗号資産課税の実務を根本から変える転換点になります。
暗号資産は匿名性が高い、国境を越えるから把握されにくいという時代は終わり、他の金融資産と同様に、国際的な監視と情報共有の対象となりました。
今後は、暗号資産取引を行うすべての人が、最初から申告を前提とした管理を行うことが求められます。
税務調査の強化という側面だけでなく、制度の透明化が進む過程として、この動きを正しく理解しておくことが重要です。
参考
- 税のしるべ「暗号資産等の取引情報を各国の税務当局間で自動交換、令和8年1月に施行」(2026年2月2日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
