ステーブルコインは、価格変動を抑えた暗号資産として、送金や決済の分野を中心に急速に存在感を高めています。
当初は「便利な決済インフラ」という技術的側面が注目されてきましたが、足元では金融システム全体に与える影響、特に銀行・国債市場・通貨制度への波及が意識され始めています。
本稿では、ステーブルコインに付随する「利回り」の問題、国債需要との関係、そして通貨代替のリスクについて整理し、今後の金融構造の変化を考察します。
ステーブルコインに「利回り」がつく意味
米国では、ステーブルコインの発行体が直接利息を支払うことは法令で制限されています。一方で、交換業者やウォレット事業者が、保有残高に応じた報酬を提供する動きが広がっています。
これは形式上は「利息」ではありませんが、利用者から見れば銀行預金より高い利回りを得られる手段として認識されます。結果として、
- 銀行預金からステーブルコインへの資金移動
- 銀行の貸出原資の縮小
といった影響が懸念されるようになりました。
金融当局が警戒するのは、個々のサービスの是非というよりも、こうした動きが積み重なったときの金融仲介機能への影響です。
DeFiとの接続がもたらす資金循環の変化
ステーブルコインは、分散型金融(DeFi)と結びつくことで、従来の銀行システムを経由しない資金運用を可能にします。
DeFi上では、ステーブルコインを預けることで比較的高い利回りを得られる仕組みが存在し、これが利用拡大の原動力になっています。
この構造が広がると、
- 銀行を介さない資金移動が常態化
- 金融政策の波及経路が不透明化
といった課題が生じます。
国際機関が「マクロ金融の安定」への影響を指摘する背景には、こうした資金循環の変質があります。
円建てステーブルコインと国債需要
国内では、円建てステーブルコインの発行も始まりました。
円建てステーブルコインは、その裏付け資産として国債を一定割合で保有する設計が想定されています。
一見すると、
- ステーブルコインの普及
- 国債需要の増加
という好循環が期待されます。
しかし注意すべき点もあります。銀行預金がステーブルコインへ移動すれば、銀行自身が国債を購入する余力は低下します。
結果として、国債需要が「純増」するのか、それとも単なる受け皿の移動にとどまるのかは、現時点では見通せません。
通貨代替としてのステーブルコイン
より深刻な論点が、通貨代替のリスクです。
高インフレに直面した国では、法定通貨への信認が低下し、ドル建てステーブルコインが事実上の決済手段として使われ始めています。
この現象が進むと、
- 金融政策の有効性低下
- 通貨主権への影響
が避けられません。
利便性の高いデジタル通貨が、結果として国家の通貨制度を侵食する可能性がある点は、先進国にとっても他人事ではありません。
CBDC・トークン化預金との共存
各国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)やトークン化預金の検討を進める背景には、ステーブルコインの拡大があります。
民間主導のデジタルマネーに対し、公的な枠組みで通貨の流れを管理しようとする動きとも言えます。
今後は、
- ステーブルコイン
- トークン化預金
- CBDC
が並立する複雑な金融環境が形成される可能性が高いと考えられます。
結論
ステーブルコインは、単なる新しい決済手段ではありません。
利回りの提供、国債市場との関係、通貨代替の可能性などを通じて、金融システムの根幹に影響を及ぼし始めています。
利便性を活かしつつ、金融の安定と通貨主権をどう守るのか。
ステーブルコインは、技術革新と制度設計のバランスが問われる存在として、今後も議論の中心であり続けるでしょう。
参考
・日本経済新聞「号砲ステーブルコイン(下)金融市場揺らすリスク」
・日本経済新聞「Market SCOPE ステーブルコイン『JPYC』発行額10億円に」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

