定年延長や役職定年は、多くの企業で当たり前の制度になりつつあります。60歳以降も働けること自体は安心材料ですが、一方で収入の減少や役割の変化に戸惑う人も少なくありません。
特に50代後半になると、「このまま働き続けた場合、老後の生活は大丈夫なのか」「税金や年金はどう変わるのか」といった不安が現実味を帯びてきます。
本稿では、定年延長・役職定年後の働き方を、税金と年金の視点から整理します。
定年延長・役職定年で何が変わるのか
役職定年や定年延長によって、最も大きく変わるのは「年収」です。
管理職手当の消失や職務給の引き下げにより、年収が2~3割、場合によってはそれ以上減少するケースもあります。
一方で、勤務時間や業務量は大きく変わらないこともあり、「収入は下がったが負担感は変わらない」という不満につながりやすい構造になっています。
税金面で見落としやすいポイント
年収が下がると、所得税・住民税は軽くなります。しかし注意したいのは、社会保険料との関係です。
会社員である限り、健康保険料や厚生年金保険料は給与額に応じて発生します。年収が下がっても、手取りの減少幅が想像以上に大きく感じられることがあります。
また、60歳前後は退職金の受け取りや企業年金、一時金の支給が重なる時期でもあり、所得の組み合わせ次第では税負担が増えることもあります。
年金との関係をどう考えるか
老後設計で欠かせないのが、公的年金との関係です。
厚生年金は、原則として加入期間と報酬額に基づいて将来の年金額が決まります。定年延長で働き続けることは、年金額の上積みにつながります。
一方、60歳以降に年金を受け取りながら働く場合、一定の収入を超えると年金が減額される「在職老齢年金」の仕組みが影響します。
働き方によっては、「働いた分だけ手取りが増えない」と感じる場面も出てきます。
退職金・企業年金とのバランス
役職定年後や定年延長後の時期は、退職金や企業年金の受け取り方も重要な判断ポイントです。
一時金で受け取るのか、年金形式で受け取るのかによって、税金の扱いは大きく異なります。
短期的な税負担の軽さだけで判断すると、長期的なキャッシュフローや公的年金とのバランスを見誤ることがあります。
「働く前提」で老後設計を見直す
これからの老後設計は、「何歳で完全に引退するか」ではなく、「どの程度働き続けるか」を前提に考える必要があります。
役職や肩書にこだわらず、収入の柱を複数持つ意識を持つことも重要です。
フルタイムでなくても、専門性を生かした働き方や、報酬と負担のバランスが取れた形を選ぶことで、精神的な安定につながります。
結論
定年延長や役職定年は、老後の安心を自動的にもたらす制度ではありません。
収入の変化、税金、年金の仕組みを正しく理解したうえで、「どう働き、どう受け取るか」を自分で設計する必要があります。
50代は、その準備を始める最後の重要な時期です。会社任せにせず、自分の人生全体を見据えた老後設計を考えることが、これからの時代には欠かせません。
参考
・日本経済新聞「〈ライフスタイル 働く〉『上司は年下』悩む50代 現在の貢献にプライド持つ」(2026年2月3日夕刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
