金価格はなぜ急落したのか――「安全資産」神話と変動リスクを冷静に考える

FP
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金(ゴールド)は長年にわたり「安全資産」の代表格として位置づけられてきました。地政学リスクや金融不安が高まる局面では買われ、危機が後退すれば売られる――こうした説明は多くの投資家にとって馴染み深いものです。
しかし、2026年初頭の金価格の動きは、「安全資産」という言葉だけでは整理しきれない側面を浮き彫りにしています。中東情勢の緊張後退をきっかけにした急落、そして平時の2倍に達した価格変動予想。この記事では、足元の金市場で何が起きているのかを整理し、今後の見通しを冷静に考えてみます。


中東不安の後退と「安全資産売り」

今回の金価格下落の直接的なきっかけは、米国とイランの交渉進展への期待が報じられたことでした。地政学リスクが和らぐと、リスク回避目的で積み上がっていた金への買いが後退しやすくなります。
金は利息や配当を生まない資産であるため、「何かあったときの逃避先」として選ばれる色合いが強い資産です。その前提が崩れれば、売りが出やすいのは構造的に自然な動きといえます。


金利環境の変化が重なる

もう一つ重要なのが、金融政策を巡る見方の変化です。次期FRB議長が利下げに消極的、いわゆるタカ派と受け止められたことで、金利水準が高止まりするとの観測が広がりました。
金利が高い環境では、利息を生まない金は相対的な魅力を失います。債券や預金と比べた「機会コスト」が意識され、金の先高観が後退しやすくなるためです。今回の下落は、地政学要因と金利要因が同時に作用した結果と整理できます。


「変動予想」が示す市場心理

注目すべき点は、価格水準そのものよりも「変動の大きさ」です。金価格の予想変動性を示す指数は平時の約2倍に達しており、市場が強い不安定さを織り込んでいることが分かります。
これは「必ずさらに下がる」という予測を意味するものではありませんが、「どちらに動いてもおかしくない」という警戒感が強い状態を示しています。安全資産であるはずの金が、短期的には投機色の強い値動きをしている点は見逃せません。


歴史が示す「急騰後の調整」

過去を振り返ると、金価格が急騰した局面の後には、大きな調整が入るケースも少なくありません。1980年の高値形成後、1年以内に大幅な下落を経験した例は、その代表例です。
今回も、短期間での急騰があったからこそ、同程度の調整リスクが意識されやすい状況にあります。中長期の価値と、短期の価格変動は必ずしも一致しない点を意識する必要があります。


今後の見通しをどう考えるか

現時点では、「すでに底を打った」と断言できる材料は多くありません。一方で、信用取引などによる過度な買いポジションの整理が進めば、価格が落ち着く可能性もあります。
重要なのは、金を「必ず守ってくれる資産」と過信しないことです。金はあくまで価格変動する金融資産であり、短期的には株式や暗号資産と同様に大きく上下する局面があります。


結論

今回の金価格下落は、中東情勢の不安後退と金利環境の変化が重なった結果であり、「安全資産だから下がらない」という単純な話ではありませんでした。
変動予想が高水準にある今は、値動きそのものよりも「リスクの大きさ」をどう受け止めるかが問われる局面です。
金を保有する場合でも、短期の価格変動と中長期の位置づけを分けて考え、ポートフォリオ全体の中で冷静に位置づける視点が重要になっています。


参考

日本経済新聞
「金、中東不安後退で売り 変動予想、平時の2倍 一段の下落に身構え」
2026年2月3日 夕刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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