物価上昇が続く局面では、「資産の価値を守る手段」が注目されます。
その中で、暗号資産、特にビットコインは「供給量に上限がある」「法定通貨と異なり刷れない」といった理由から、インフレヘッジとして語られることが多くなりました。
しかし、実際の価格推移を見ると、暗号資産は本当にインフレに強い資産と言えるのでしょうか。
本稿では、理論と実際の市場の動きを整理しながら、この問いを考えます。
インフレヘッジとは何か
インフレヘッジとは、物価が上昇しても実質的な価値を維持しやすい資産を指します。
代表的なものとして、以下が挙げられます。
- 実物資産(不動産、金など)
- インフレに連動しやすい収益を持つ資産
- 通貨価値の下落に左右されにくい資産
重要なのは、「価格が上がること」ではなく、購買力を守れるかどうかという点です。
暗号資産がインフレヘッジとされる理由
暗号資産がインフレヘッジと期待される理由は、主に次の3点です。
- 発行上限があらかじめ決められている
- 中央銀行による金融政策の影響を受けにくいと考えられている
- 国境を越えて共通の価値を持つというイメージがある
このため、法定通貨の価値が下がる局面では、暗号資産に資金が流入するという見方が広がってきました。
実際の値動きが示すもの
ところが、近年の相場を見ると、暗号資産はインフレ局面で必ずしも安定していません。
- 金利上昇局面で大きく下落する
- 株式市場が調整すると同時に売られる
- 金などの伝統的なインフレヘッジ資産と逆の動きをすることもある
これは、暗号資産が「インフレ」そのものよりも、金融環境(特に金利と流動性)に強く反応していることを示しています。
なぜインフレに強くならないのか
暗号資産がインフレヘッジとして機能しにくい理由には、いくつかの構造的な要因があります。
- 利息や配当を生まないため、金利上昇局面では相対的に不利
- 価格変動が大きく、短期的なリスク資産として扱われやすい
- 機関投資家や企業の売買により、市場心理の影響を強く受ける
その結果、インフレ時でも「安全資産」ではなく、「リスク資産」として売られる場面が生じます。
金との決定的な違い
暗号資産は「デジタルゴールド」と呼ばれることがありますが、両者には大きな違いがあります。
- 金は長い歴史の中で価値保存手段として定着している
- 金は中央銀行の準備資産でもある
- 暗号資産は価格形成の歴史が浅く、評価軸が定まっていない
この違いが、インフレ局面での安定性に影響しています。
暗号資産は何のヘッジなのか
現時点では、暗号資産は
「インフレヘッジ」
というより、
金融緩和や過剰流動性のヘッジ(あるいはその恩恵を受ける資産)
と捉える方が実態に近いと言えます。
緩和的な金融環境では価格が上昇しやすく、引き締め局面では大きく調整する。
この性質は、株式やハイリスク資産と共通しています。
結論
暗号資産は、理論上はインフレに強い要素を持っています。
しかし、現実の市場では、
- 金利
- 金融政策
- 投資家心理
といった要因に左右されやすく、安定したインフレヘッジとは言い切れません。
暗号資産を保有する場合は、
「物価上昇から資産を守るため」
ではなく、
高い変動性を前提とした一つの投資対象
として位置付ける視点が重要です。
参考
日本経済新聞
「ビットコインも急落 貴金属市場荒れ、売り拍車」(2026年2月3日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
