棚卸資産は多すぎても少なすぎても危険です― 適正在庫を考える視点 ―

会計
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決算書を確認していると、売上高や利益以上に気になる項目があります。それが棚卸資産です。
在庫は事業を継続するうえで欠かせない存在ですが、管理を誤ると資金繰りや収益力に大きな影響を及ぼします。特に中小企業では、棚卸資産の増減が経営状態を左右するケースも少なくありません。

本稿では、棚卸資産の基本的な考え方を整理したうえで、適正在庫を判断するための視点、そして経理担当者が果たすべき役割について考えます。


棚卸資産とは何か

棚卸資産とは、販売を目的として保有する資産を指します。商品、製品、原材料、仕掛品、半製品などがこれに該当します。
現金で仕入れた在庫は、形を変えた現金ともいえる存在です。会計上の数値としてだけでなく、経営管理の観点からも重要な項目です。


在庫は多ければ安心なのか

在庫を多く持つことで、欠品による販売機会損失を防げるという営業面でのメリットがあります。既存取引先からの受注増加や、販路開拓につながる場合もあるでしょう。

一方で、在庫の大量保有には注意すべき側面があります。売上代金の入金前に仕入代金の支払いが発生すれば、運転資金が圧迫されます。借入に依存すれば支払利息が発生し、倉庫保管料や保険料などの付随コストも増加します。

さらに、需要予測を誤ると不良在庫が発生します。値下げや廃棄を余儀なくされ、利益を直接的に圧迫する結果となります。


棚卸資産回転期間という考え方

在庫が適正水準にあるかを判断する指標の一つに、棚卸資産回転期間があります。
これは、棚卸資産が売上高の何か月分に相当するかを示す指標で、在庫をどの程度の期間で販売できているかを把握するために用いられます。

一般的には、回転期間が短いほど在庫を長期間抱えずに販売できていると評価されます。ただし、業種や事業内容によって適正水準は異なります。重要なのは、自社の状況と照らし合わせて違和感がないかを確認することです。


棚卸を毎月実施する重要性

棚卸を年に一度しか行わない場合、月次の損益は実態とかけ離れた数値になります。
月末の在庫を把握せず、期首残高のまま処理していると、ある月は利益が過大に、別の月は赤字に見えるなど、数字に歪みが生じます。

毎月棚卸を実施し、会計データに正確に反映させることで、利益率や原価構造の変化を早期に把握できます。これは経営判断に資するだけでなく、金融機関への説明という点でも重要です。


経理担当者に求められる視点

営業部門や経営者は、在庫を多めに持ちたがる傾向があります。しかし、過剰在庫は資金繰りを悪化させ、将来の収益力を損ないます。

経理担当者には、在庫を現金と同じ価値を持つ資産として捉える視点が求められます。
倉庫に足を運び、古い在庫や動きの鈍い商品がないかを確認すること、金額だけでなく数量の推移にも目を向けることが、適正在庫の維持につながります。


結論

棚卸資産は、事業を支える重要な資産である一方、管理を誤れば経営リスクにもなります。
在庫を持つ目的を明確にし、回転期間や数量の動きを確認しながら、定期的な棚卸を行うことが不可欠です。

経理担当者は、単に決算書を作成する存在ではなく、在庫管理を通じて経営の健全性を支える役割を担っています。
現金と同じ重みで在庫を捉えることが、安定した経営への第一歩といえるでしょう。


参考

・企業実務 2026年2月号
 「棚卸資産の適正保有と管理強化を」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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