近年、インターネット取引の普及や越境ECの拡大により、中小企業や個人事業主であっても外貨建て取引を行う場面が増えています。
外貨建て取引では、契約時と実際の決済時で為替レートが異なることが珍しくありません。その結果、日本円に換算した金額に差が生じます。
この差額をどのような勘定科目で処理すべきかは、実務に慣れていないと迷いやすいポイントです。本稿では、外貨建て取引を決済した際の基本的な考え方を、具体的なケースをもとに整理します。
外貨建て取引と円換算の基本ルール
外貨建て取引とは、売上や仕入れなどの取引金額がドルやユーロなどの外国通貨で表示されている取引をいいます。
会計処理においては、外貨建ての金額を日本円に換算して記帳する必要があります。
原則として、
- 取引発生時:取引発生時点の為替相場で円換算
- 決済時:決済時点の為替相場で円換算
というルールが採られます。
この間に為替相場が変動している場合、円換算額に差が生じます。この差額が「為替差損」または「為替差益」として処理されます。
為替差損益とは何か
為替差損益とは、外貨建ての金銭債権・金銭債務を決済したり、決算時に円換算したりする際に、為替相場の変動によって生じる差額をいいます。
円安方向に動けば支払額が増え、結果として「為替差損」が発生します。
反対に円高方向に動けば受取額が増え、「為替差益」が発生します。
損益計算書では、為替差益は営業外収益、為替差損は営業外費用として処理し、実務上は両者を相殺した純額で表示されるのが一般的です。
ケース① 取引が発生し、決済まで行った場合
まず、取引発生から決済までが同一事業年度内で完結するケースです。
例えば、期中に米国から1,000ドルの商品を仕入れ、翌月末に代金を普通預金口座から支払ったとします。
取引発生時のレートが1ドル=150円、決済時のレートが1ドル=155円であった場合、仕入計上額は150,000円となりますが、実際の支払額は155,000円となります。
この差額5,000円は、為替相場の変動によるものであり、「為替差損」として処理します。
つまり、取引自体の金額が変わったわけではなく、決済時点での円換算額が増えた結果として生じた損失である、という整理になります。
ケース② 取引発生後、決算を迎えた場合
次に、取引は発生しているものの、決済前に決算期を迎えるケースです。
例えば、期中に米国へ2,000ドルの商品を掛けで販売し、入金前に決算日を迎えたとします。
取引発生時のレートが1ドル=150円、決算時のレートが1ドル=155円であった場合、売掛金は決算時のレートで円換算し直す必要があります。
この結果、取引発生時に計上した円換算額との差額が生じます。この差額は「為替差益」または「為替差損」として、当期の損益に反映します。
なお、これは実際に現金の受け取りがあったわけではなく、あくまで評価替えによる損益である点が重要です。
消費税との関係
為替差損益は、資産や負債を円換算する過程で生じる評価差額です。
そのため、消費税の課税対象にはなりません。
輸出取引が免税取引に該当する場合であっても、為替差損益そのものは消費税計算とは切り離して考える必要があります。
実務では、売上や仕入れの消費税区分と、為替差損益の処理を混同しないことが重要です。
実務上の注意点
外貨建て取引では、為替レートの適用時点を誤ると、損益や債権債務の金額がずれてしまいます。
特に注意したいのは、
- 取引発生時と決済時のレートを明確に区別すること
- 決算時の評価替えを忘れないこと
- 為替差損益と消費税の関係を正しく理解すること
です。
日常的に外貨建て取引が発生する場合には、社内ルールとして使用する為替レートや処理方法を統一しておくことも有効です。
結論
外貨建て取引を決済した際に生じる差額は、「為替差損」または「為替差益」として処理します。
これは取引そのものの金額変動ではなく、為替相場の変動による円換算額の差である点を押さえることが重要です。
基本的なルールと考え方を理解しておけば、外貨建て取引に対する心理的なハードルは大きく下がります。
実務では、取引発生時・決済時・決算時、それぞれのタイミングでの処理を丁寧に確認する姿勢が求められます。
参考
- 企業実務 2026年2月号
駒井伸俊「外貨建て取引を決済したときは?」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

