通勤手当は非課税という認識は、実務ではほぼ常識となっています。しかし、税務調査の現場では、通勤手当が課税対象とされるケースが少なくありません。
原因の多くは、非課税限度額の判定ミスや、通勤経路・支給方法の合理性が説明できないことにあります。
本稿では、通勤手当が課税される仕組みを整理したうえで、経理・総務担当者が実務で注意すべきポイントを解説します。
通勤手当と交通費は別物
経理実務では、通勤手当と交通費を明確に区別する必要があります。
交通費は、出張や取引先訪問など業務遂行のために都度発生する費用であり、実費精算であれば原則として全額が非課税です。
一方、通勤手当は、自宅から勤務地までの通勤に対して定期的に支給される手当であり、税法上は非課税限度額が設けられています。
この違いを曖昧にしたまま処理すると、給与課税のリスクが高まります。
非課税でも全額安全とは限らない
通勤手当は、非課税限度額の範囲内であっても、支給方法や内容が不合理であれば課税対象となる場合があります。
代表的なのは、通勤経路の虚偽申告や、実際には通勤に不要な区間や特急料金などを含めているケースです。
名目は通勤手当でも、実質的に給与の一部と判断されれば、その全額または一部が課税されます。
最も経済的かつ合理的な経路が基準
通勤手当が非課税とされるためには、最も経済的かつ合理的な経路であることが前提となります。
単に運賃が安いかどうかだけでなく、所要時間や距離、社会通念上の妥当性も含めて判断されます。
経理担当者は、従業員から提出された通勤経路図や運賃資料、定期券の購入履歴などを基に、合理性を検証する体制を整えることが重要です。
マイカー通勤手当の非課税限度額改正
2025年の税制改正により、マイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。
改正後の限度額は、片道の通勤距離に応じて細かく設定されており、従来よりも非課税枠が拡大しています。
ただし、適用対象となるのは一定の時期以降に支払われる通勤手当に限られます。
改正前の限度額で処理したまま放置していると、年末調整のやり直しや過不足精算が必要になるため、注意が必要です。
複数の交通手段を使う場合の注意点
公共交通機関とマイカーを併用している場合、非課税限度額はそれぞれの交通手段ごとに判定します。
機械的に合算するのではなく、通勤全体として合理的な経路であるかを前提に、実費相当額を上限として判断します。
この点は判断を誤りやすく、税務調査でも指摘されやすいポイントです。
税務調査で問われるのは社内体制
税務調査では、個々の支給額だけでなく、会社としてどのようなルールで通勤手当を管理しているかが確認されます。
通勤手当や旅費に関する規程を整備し、支給基準、申請方法、不正申告時の対応などを明文化しておくことが重要です。
さらに、規程を作るだけでなく、実際に運用している証跡を残すことが否認リスクの低減につながります。
結論
通勤手当は非課税という思い込みが、税務リスクを高める原因になります。
非課税限度額の正確な把握、合理的な通勤経路の確認、規程と実務の整合性を意識することで、税務調査に耐えうる処理が可能になります。
経理・総務担当者にとって、通勤手当は日常的な処理だからこそ、定期的な見直しが欠かせない分野といえるでしょう。
参考
企業実務 2026年2月号
課税されることもある通勤手当を正しく支給するための留意点
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
