第8回 事業承継税制を使わない選択肢 相続時精算課税と段階的な株式承継

税理士
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事業承継を考える際、
「事業承継税制を使うかどうか」
が大きな分かれ目になることは、第7回で述べたとおりです。

一方で、実務の現場では
あえて事業承継税制を使わない
という判断が合理的なケースも少なくありません。

本稿では、事業承継税制に依らずに承継を進める方法として、
相続時精算課税や段階的な株式承継の考え方を整理します。

1.「一度に譲る」ことが難しいケース

事業承継税制の特例措置では、
原則として、代表者交代とともに、
一定割合以上の自社株式をまとめて承継することが求められます。

しかし、次のような経営者も少なくありません。

  • 後継者の経営判断を見極めながら進めたい
  • すぐに代表権を譲ることに不安がある
  • 段階的に責任と権限を移していきたい

このような場合、
一度に株式を譲る前提の制度は、
経営の実態に合わないことがあります。


2.相続時精算課税という考え方

相続時精算課税は、
贈与時には原則として税負担を抑え、
最終的に相続時にまとめて精算する制度です。

事業承継の場面では、
次のような使い方が検討されます。

  • 毎年、一定数の株式を贈与する
  • 贈与時点の評価額を固定する
  • 将来の相続時に合算して整理する

この方法の特徴は、
株価の上昇リスクを早期に確定できる点にあります。


3.毎期の株価評価が意味を持つ

段階的な株式承継を行う場合、
毎決算期に自社株式の相続税評価額を確認することが重要です。

これにより、

  • 贈与のタイミング
  • 贈与株数
  • 課税関係の見通し

を、都度調整することが可能になります。

一度に結論を出すのではなく、
状況を見ながら軌道修正できる点が、
この方法の大きな利点です。


4.暦年贈与と組み合わせる視点

相続時精算課税だけでなく、
低い税率水準の暦年課税を活用する方法もあります。

  • 基礎控除を活用した少額贈与
  • 株価が一時的に下がった局面での贈与

これらを組み合わせることで、
税負担を抑えつつ、
時間をかけて承継を進めることが可能です。

重要なのは、
制度を固定的に使うのではなく、組み合わせて考えることです。


5.制度を使わないからこそ必要な整理

事業承継税制を使わない場合、
制度による縛りはありません。

その分、

  • 家族間の合意
  • 株主構成の整理
  • 遺留分への配慮

といった、
人と法務の整理がより重要になります。

税制に頼らない分、
事前の話し合いと文書化が欠かせません。


結論

事業承継税制を使わない選択は、
決して消極的な判断ではありません。

後継者の成長を見守りながら、
柔軟に承継を進められるという点で、
経営の実態に合った方法になることもあります。

大切なのは、
制度に合わせて事業承継を行うのではなく、
事業と人に合わせて制度を選ぶことです。

次回は、シリーズの最終回として、
事業承継で揉めないための準備とチェックリストを解説します。


参考

  • 東京税理士会 全国統一研修会配布資料
     「事業承継税制を使わない手法/相続時精算課税贈与」令和7年度

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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