事業承継の場面で、見落とされがちでありながら、
実は最も大きな障害になるのが「経営者の個人保証」です。
後継者に経営を引き継がせたいと考えていても、
多額の借入に個人保証が付いたままでは、
後継者が引き継ぐ決断をためらうケースは少なくありません。
本稿では、事業承継における経営者保証の位置づけと、
実務上どのように向き合うべきかを整理します。
1.経営者保証が事業承継を止める
中小企業の融資では、長らく
「経営者が個人保証をするのが当然」
という考え方が一般的でした。
しかし、事業承継の局面では、この個人保証が重くのしかかります。
- 後継者が保証人になることへの心理的抵抗
- 万一の場合、個人生活まで破綻するリスク
- 家族からの反対
結果として、
「会社はあるが、継ぐ人がいない」
という状況が生まれます。
2.個人保証は本来、好ましいものではない
経営者個人保証は、
会社と個人の財産を一体化させる仕組みです。
これは、事業承継で目指す
会社と個人の分離とは、方向性が逆になります。
本来、事業は会社の責任で行われるべきものであり、
経営者個人の生活まで無制限に巻き込むべきではありません。
この考え方を明確に示しているのが、
「経営者保証に関するガイドライン」です。
3.経営者保証ガイドラインの考え方
経営者保証ガイドラインは、
金融機関と中小企業の双方が、
経営者保証に過度に依存しない融資慣行を目指すための指針です。
このガイドラインでは、
一定の条件を満たせば、
経営者保証なしの融資を検討すべきとされています。
重要なのは、
「自動的に外れる制度」ではないという点です。
会社側が、
保証に依存しなくてもよい状態を作る努力をすることが前提になります。
4.保証を外すために会社に求められること
実務上、金融機関が重視するのは、次のような点です。
- 会社と経営者個人の財産が分離されているか
- 財務基盤が安定しているか
- 適時・適切な情報開示がされているか
これらは、一朝一夕に整うものではありません。
そのため、個人保証の解除は、
一度で成功しないことが前提になります。
5.事業承継と保証解除は並行して進める
事業承継の実務では、
次のような進め方をすることが多くあります。
- まずは経営改善計画を作成する
- 計画の実行状況を金融機関と共有する
- 新規融資から保証なしを目指す
既存の借入については、
すぐに保証解除ができないことも少なくありません。
それでも、
後継者に個人保証を引き継がせない
という方向性を明確にすることが重要です。
結論
経営者保証の問題は、
事業承継の可否を左右する重要な論点です。
保証を外すことは簡単ではありませんが、
不可能でもありません。
会社の体質改善と情報開示を積み重ね、
金融機関と時間をかけて協調することが、
結果として事業承継を円滑に進めることにつながります。
次回は、事業承継の手法として注目されやすい
持株会社の活用について、
メリットと注意点を整理します。
参考
- 東京税理士会 全国統一研修会配布資料
「経営者の個人保証問題/経営者保証ガイドライン」令和7年度
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
