第2回 事業価値とは何か 承継できる会社・できない会社の分かれ目

税理士
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事業承継の相談を受けると、「うちの会社はいくらで評価されるのか」という質問を最初に受けることがあります。
しかし、事業承継において本当に重要なのは、株価の金額そのものではありません。

承継を考えるうえで最初に問うべきなのは、
その会社に引き継ぐべき事業価値があるのか、そして
その価値は次の世代でも維持できるのかという点です。

本稿では、事業承継の前提となる「事業価値」の考え方と、
承継できる会社と、そうでない会社を分ける視点について整理します。

1.事業価値とは「株価」ではない

事業価値という言葉は、しばしば株式評価額と混同されます。
しかし、事業承継の文脈でいう事業価値とは、次のような意味を持ちます。

  • 顧客に選ばれ続ける理由があるか
  • 利益を生み続ける仕組みがあるか
  • 人が入れ替わっても事業が回るか

つまり、将来にわたって事業が継続できる力そのものです。

株価は、その結果を数字で表した一側面にすぎません。
事業価値が毀損していれば、どれだけ税制や制度を使っても、承継後に会社は行き詰まります。


2.事業価値の源泉を考える

事業価値を考える際に重要なのが、「価値の源泉はどこにあるのか」という視点です。

多くの中小企業では、次のようなところに事業価値の源泉があります。

  • 特定の顧客との長年の取引関係
  • 地域での信用や評判
  • 技術力やノウハウ
  • 経営者個人の人脈や判断力

ここで注意すべきなのは、
その価値が経営者個人に強く依存していないかという点です。

価値の源泉が経営者本人に集中している場合、
承継と同時にその価値が失われる可能性があります。


3.事業価値を整理するための視点

事業価値を把握するためには、いくつかの分析の視点が役に立ちます。
重要なのは、分析そのものではなく、経営者や後継者と一緒に考えることです。

(1)自社の強みと弱み

自社には、他社にはない強みがあるのか。
一方で、将来的な弱点や課題は何か。

これは、経営者の頭の中にある感覚を言語化する作業でもあります。

(2)市場・顧客・競合との関係

市場は縮小していないか。
顧客のニーズは変化していないか。
競合との差別化は維持できているか。

事業承継は、現在ではなく承継後の未来を見据える必要があります。

(3)組織として機能しているか
  • 経営判断が属人的になっていないか
  • 後継者が判断できる仕組みはあるか
  • 組織として情報が共有されているか

人が変わっても事業が回る状態になっているかどうかが、承継の成否を分けます。


4.承継の可否は四つの方向に分かれる

事業価値を整理した結果、事業承継の方向性は大きく四つに分かれます。

1つ目は、事業価値があり、承継も可能なケースです。
この場合は、後継者育成や承継環境の整備を進めていきます。

2つ目は、事業価値はあるが、そのままでは承継が難しいケースです。
経営改善や事業の磨き上げが必要になります。

3つ目は、事業価値はあるものの、親族内承継が難しいケースです。
この場合、第三者承継やM&Aを検討する余地があります。

4つ目は、事業価値がほとんど見込めないケースです。
この場合、無理に承継するのではなく、廃業や整理を選択することも合理的な判断になります。

「承継しない」という選択も、立派な事業判断です。


結論

事業承継を考えるうえで、事業価値の見極めは避けて通れません。
それは株価を計算することではなく、
その事業が次の世代でも続けられるかを見極める作業です。

価値の源泉を整理し、将来にわたって維持できるかを考えることで、
初めて承継の方向性が見えてきます。

次回は、こうした事業価値を前提に、
事業承継を実務としてどのような順番で進めていくのかを解説します。


参考

  • 東京税理士会 全国統一研修会配布資料
     「事業価値の分析手法/事業承継支援マニュアル」令和7年度

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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