本シリーズでは、必要経費・家事関連費・青色事業専従者給与について、
制度の考え方から実務上の判断までを整理してきました。
ここまで読んでいただいた方の多くは、
次の点が気になっているのではないでしょうか。
- 税務署は、実際のところどこを見ているのか
- 何を準備しておけば、否認されにくいのか
- 判断に迷ったとき、どこで立ち止まるべきか
最終回では、これまでの内容を踏まえ、
税務署の視点で「必要経費」を点検するための実務的な整理
を行います。
税務署は「経費かどうか」から見ていない
税務署が調査で最初に見るのは、
「これは経費かどうか」ではありません。
まず確認されるのは、
その支出がどのような性質のものか
という点です。
- 業務専用の支出か
- 家事費か
- 家事関連費か
ここで「家事関連費」に該当すると判断された場合、
原則として必要経費不算入となり、
例外要件を満たすかどうかが次の検討段階になります。
実務で使える判断フロー
必要経費否認を避けるためには、
次の順序で点検することが有効です。
第一に、
事業を行っていなければ発生しなかった支出か
を確認します。
第二に、
業務の遂行上、機能的・合理的に必要だったか
を検討します。
第三に、
業務部分と私的部分を明確に区分できるか
を確認します。
第四に、
その説明を裏付ける客観的な資料があるか
を点検します。
最後に、
社会通念上、常識的な範囲に収まっているか
を総合的に評価します。
この順序で説明できない支出は、
否認リスクが高いと考えるべきです。
「説明できる経費」と「危ない経費」の違い
税務調査で問題になるのは、
金額の大小よりも、
説明の一貫性 です。
例えば、
- なぜその支出が業務に必要だったのか
- なぜその割合で按分したのか
- なぜその金額が相当だといえるのか
これらに対して、
その場しのぎの説明になってしまうと、
否認されやすくなります。
一方で、
あらかじめ考え方を整理し、
記録を残している支出については、
比較的スムーズに認められる傾向があります。
家事関連費で特に注意すべきポイント
家事関連費については、
次の点が特に重要です。
- 区分の根拠が数値で示されているか
- 按分割合が毎年大きく変動していないか
- 使用実態と割合が整合しているか
「前年と同じ割合だから」という説明だけでは、
不十分と判断されることがあります。
実態に即した説明ができるかどうかが、
最大のポイントです。
青色事業専従者給与は別枠で考える
青色事業専従者給与は、
一般的な必要経費とは、
別枠で考える必要があります。
所得税法56条の原則を踏まえ、
- 専ら事業に従事しているか
- 勤務実態を示す資料があるか
- 報酬額が第三者目線で相当か
を、毎年点検することが重要です。
「去年は認められたから今年も大丈夫」
という考え方は、
最も危険なパターンの一つです。
税務署と対立しないための視点
税務調査は、
「敵と味方」の関係ではありません。
税務署が求めているのは、
客観的に説明可能な事実関係 です。
感情的な主張や、
「仕事に役立っているはずだ」という抽象的な説明は、
かえって不利になることがあります。
制度の枠組みに沿って、
淡々と説明できる状態を整えておくことが、
結果的にリスクを下げることにつながります。
結論
必要経費を巡るトラブルの多くは、
「知らなかった」ことよりも、
「整理していなかった」ことから生じます。
- なぜ経費になるのか
- どこまでが経費なのか
- その根拠をどう説明するのか
これらを事前に言語化し、
記録として残しておくことが、
最大の防御策になります。
本シリーズが、
日々の経費処理や確定申告を見直す際の
判断軸として役立てば幸いです。
参考
東京税理士会研修資料
全国統一研修会「必要経費と家事関連費の判断基準」
「青色事業専従者給与の留意事項」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
