「現金おことわり」は本当に合法なのか キャッシュレス時代に知っておきたいお金と法律の基本

FP
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近年、飲食店や小売店を中心に、現金が使えない完全キャッシュレスの店舗が増えています。最近では、路線バスでも現金が使えないケースがあると聞き、不安を感じる人もいるのではないでしょうか。
日本円は国が定めた正当な通貨である以上、現金での支払いを拒否することは法律違反ではないのか。この疑問は、キャッシュレス化が進む今だからこそ、多くの人が一度は抱くものです。
本記事では、日本経済新聞の家計の法律クリニックの記事を参考に、現金の法的な位置付けと、現金不可が許される条件について整理します。

現金は法貨であり、強制通用力がある

日本で使われているお金については、日本銀行法と貨幣法という二つの法律が関係しています。
紙幣の正式名称は日本銀行券で、日本銀行法では、日本銀行が発行する銀行券は法貨として無制限に通用すると定められています。これは、すでに存在する支払い義務については、相手が現金での支払いを拒否できないという意味です。この効力を強制通用力といいます。

一方、硬貨については貨幣法により、額面価格の20倍までという制限が設けられています。例えば、1円玉で21円を支払おうとした場合、受け取り側は拒否することができます。

強制通用力が問題になるのはいつか

ここで重要なのは、強制通用力が適用されるのは、すでに債務が発生している場合に限られるという点です。
例えば、商品を受け取り、代金を支払う義務がすでに生じている場面では、原則として現金による支払いを拒否できません。

しかし、契約が成立する前の段階では話が変わります。民法には契約自由の原則があり、当事者同士がどのような条件で契約するかは、基本的に自由に決められます。

現金不可が合法になるケース

店頭や注文前に、現金は使えないことが明確に表示されている場合、客はその条件を了承したうえで契約に入ったと解釈されます。
これは、現金不可という条件も含めて、店と客の間で事前に合意が成立しているという考え方です。この場合、現金で支払えないこと自体は法律違反にはなりません。

一方で、現金不可の表示がなく、注文後や会計時になって初めて現金は使えないと告げられた場合は問題になります。この時点ではすでに契約が成立しており、支払い義務が発生しているため、現金を拒否することは法律上認められないと考えられます。

路線バスの完全キャッシュレス化

路線バスのキャッシュレス化は、国土交通省が推進している施策の一つです。
国交省は、完全キャッシュレスのバスについて、バス停などで事前に分かるよう掲示することを求めています。これにより、利用者は乗車前にキャッシュレスであることを認識し、同意したうえで利用するという建て付けになります。

ただし、キャッシュレス決済手段を持たない高齢者などが排除されてしまうのではないかという懸念もあります。契約自由の原則だけで整理してよいのか、通貨の強制通用力との関係をどう考えるのかは、今後も丁寧な検討が必要なテーマです。

結論

現金は法律上、正当な通貨であり、強制通用力を持っています。ただし、その効力が及ぶのは、すでに支払い義務が発生している場合に限られます。
契約前に現金不可が明示されていれば、契約自由の原則により、キャッシュレス限定の取引は合法と考えられます。一方で、事前の説明がないまま現金を拒否することは、トラブルの原因になり得ます。
キャッシュレス化は利便性を高める一方で、すべての人にとって使いやすいとは限りません。現金の法的な位置付けを正しく理解しつつ、誰もが排除されない仕組みをどう作るのかが、これからの課題と言えるでしょう。

参考

日本経済新聞「家計の法律クリニック 現金おことわりは合法か」(2026年1月31日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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