人口減少と高齢化が進む中で、地域の「知へのアクセス」をどう確保するかは、地方自治体にとって重要な課題となっています。書店や図書館の維持が難しくなる地域が増える一方、近年、電子図書館の導入が急速に広がっています。
電子図書館は単なるデジタル化ではなく、地域間の情報格差を埋め、教育・文化・観光を支える新たな公共インフラとしての役割を担い始めています。
電子図書館は5年で4倍に拡大
2026年1月時点で、電子図書館を導入している自治体は全国の約34%、611自治体に達しました。2021年の導入自治体数と比べると、わずか5年で約4倍に増えています。
背景には、人口減少に伴う書店の減少、図書館運営の人手不足、財政制約といった構造的な問題があります。電子図書館は、こうした課題に対する現実的な対応策として選択されつつあります。
長野県に見る「全域カバー型モデル」
全国で唯一、県内すべての市町村をカバーする電子図書館を実現しているのが長野県です。
県と77市町村が共同で運営し、人口比で費用を分担することで、約2万5千冊の電子書籍を県内どこからでも利用できる体制を整えました。人口400人に満たない村であっても、都市部と同じ蔵書にアクセスできます。
この仕組みは、単独自治体では維持が難しい電子図書館を、広域連携によって成立させた好例といえるでしょう。
教育・若年層への効果
長野県では、学校現場での活用も進んでいます。小中学校では始業前の読書時間に電子図書館を活用する学校もあり、10代の利用が朝8時台に集中しています。
また、学校単位での登録により、タブレット端末を使った読書環境が整備され、本離れへの対策としても一定の効果を上げています。
郷土資料のデジタル化と観光振興
電子図書館の活用は、一般書籍にとどまりません。
ある山村では、紙の在庫が限られていた村誌を電子書籍化し、郷土史や文化財の情報を広く発信できるようにしました。これにより、研究者や観光客からの問い合わせに対応しやすくなり、結果として地域への来訪促進にもつながっています。
郷土資料のデジタル化は、文化の保存と地域振興を両立させる手段として注目されます。
都市部では音声コンテンツが拡大
一方、都市部では電子書籍に加え、オーディオブックの導入が進んでいます。
視覚障害者や高齢者、子育て世代など、紙の本を読むことが難しい層にとって、音声コンテンツは読書の裾野を広げる役割を果たしています。
実際に、体験会や操作講習を通じて利用者層が広がり、電子図書館利用をきっかけに図書館利用券を作る人も増えています。
課題はコストと制度設計
一方で、電子図書館には課題もあります。
多くの電子書籍は、2年間で貸出回数が制限される契約となっており、人気書籍は短期間で利用上限に達します。蔵書を維持するには、継続的な購入が不可欠です。
また、電子書籍は紙の本に比べて自治体向け価格が高く設定される傾向があり、単独運営では年間数千万円規模の調達費が必要になるケースもあります。
結論
電子図書館は、過疎地や高齢化社会における情報格差を是正し、教育・文化・観光を支える重要な基盤になりつつあります。
今後は、自治体間の広域連携、児童向け読み放題契約、音声コンテンツの拡充などを組み合わせながら、持続可能な運営モデルを構築していくことが求められるでしょう。
電子図書館は「紙の代替」ではなく、地域の未来を支える公共サービスとして、次の段階に入り始めています。
参考
・日本経済新聞「電子図書館、過疎地に光 導入自治体は5年で4倍」2026年1月31日朝刊
・日本経済新聞「電子図書館、関東・山梨でも 都内、音声コンテンツ普及」2026年1月31日朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

