2026年に入り、世界の金融市場で静かな構造変化が進んでいます。
それは、米国に集中してきた投資マネーが、徐々に新興国や資源関連資産へと分散し始めている点です。
日本経済新聞が報じたように、ブラジルや南アフリカなどの新興国株式市場では、株価指数が相次いで最高値を更新しています。その背景には、ドル安傾向、資源価格の上昇、そして米国政治・経済に対する不確実性の高まりがあります。
本稿では、なぜ今「脱米国マネー」という動きが生じているのか、その構造を整理したうえで、新興国投資の魅力と注意点を考えていきます。
米国一極集中が揺らぎ始めた理由
これまでの世界の投資マネーは、米国に大きく偏っていました。
巨大なテック企業群、安定した資本市場、基軸通貨ドルの存在が、米国を唯一無二の投資先に押し上げてきたためです。
しかし2025年以降、この構図に変化が生じています。
米政権による関税政策や外交を巡る摩擦、中央銀行の独立性に対する懸念などが重なり、投資家は「米国リスク」を意識せざるを得なくなりました。
米国の金融政策を担うFRBを巡っても、政治的圧力が意識される局面があり、市場ではドル安が進行しました。その結果、ドルに依存しない資産への分散需要が高まっています。
貴金属と資源が選ばれる背景
ドル安局面で存在感を高めているのが、金や銀といった貴金属です。
通貨価値の不安定さが意識されると、実物資産への回帰が起こりやすくなります。
特に金は、中央銀行や機関投資家にとって「通貨の代替」としての役割を再評価されています。地政学リスクやインフレ懸念が続く中で、資産防衛の手段としての需要が強まっているためです。
この資源高の流れは、資源国である新興国経済にとって追い風となります。資源価格の上昇は、輸出収益や企業業績の改善を通じて、株式市場を押し上げる要因となります。
新興国株が再評価される構造
実際、株式市場では新興国株のパフォーマンスが目立っています。
MSCI新興国株指数は、先進国株式指数を上回る上昇率を記録し、投資家の関心を集めています。
背景には複数の要因があります。
第一に、米国一極集中を見直す分散投資の動きです。
第二に、インフレ沈静化を受けた新興国での金融緩和期待です。
第三に、資源高やAI需要といったテーマ性です。
米金融大手のシティグループも、資産配分の見直しが再び進む可能性を指摘しており、新興国株は分散先の一つとして位置づけられています。
地域別に見る新興国マネーの行き先
新興国と一口に言っても、その内訳は多様です。
東アジアでは、韓国や台湾がAI関連需要への期待から注目されています。半導体産業を中心に、世界の技術投資の波を取り込む構造が評価されています。
中南米では、ブラジルが代表例です。
インフレ沈静化を背景に利下げ観測が強まり、海外投資家の資金流入が加速しています。外国人投資家の買い越し額は急増しており、株価上昇を後押ししています。
アフリカでは、南アフリカが資源高の恩恵を受けています。
金をはじめとする貴金属価格の上昇は、鉱山関連企業の業績改善期待につながり、株式市場の支えとなっています。
さらに東欧では、ドイツの財政拡張を起点とした欧州内需拡大の波及効果が、チェコなどの株式市場を押し上げています。
新興国投資に潜むリスク
一方で、新興国株には固有のリスクが存在します。
最大のリスクは、世界景気の失速です。米中対立の激化やAI投資の減速が起これば、新興国経済も影響を免れません。
また、米国の利下げ観測が後退し、再びドル高が進めば、新興国から資金が流出する可能性もあります。新興国市場は、グローバルな金融環境の変化に敏感です。
加えて、制度面の脆弱性も見逃せません。
情報開示の不透明さや、突然の規制変更、政府介入といったリスクは、先進国市場よりも顕在化しやすい傾向があります。実際、インドネシア市場では指数会社の懸念表明をきっかけに株価が急落する場面もありました。
結論
脱米国マネーの動きは、短期的な流行ではなく、世界の投資構造が多極化へ向かう兆しと捉えることができます。
米国の存在感が直ちに失われるわけではありませんが、一極集中の時代が転換点を迎えていることは確かです。
新興国株や資源関連資産は、分散投資の有力な選択肢となり得ますが、その分リスク管理の重要性も高まります。
今後は、地域・通貨・資産クラスを意識した冷静な資産配分が、これまで以上に問われる局面に入ったと言えるでしょう。
参考
・日本経済新聞「脱米国マネー、新興国へ ブラジル・南ア、株最高値」2026年1月30日朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

