国内の金(ゴールド)価格が、ついに1グラム3万円台に乗せました。
2025年9月に2万円を超えてから、わずか4カ月でさらに1万円上昇するという異例のペースです。
国際市場でもロンドン現物価格が1トロイオンス5500ドル台に達し、投資需要は世界的に急拡大しています。
この動きをどう捉えるべきでしょうか。
単なる資源価格の高騰なのか、それともより大きな構造変化の兆しなのか。
本稿では、金価格急騰の背景を整理しながら、今起きている変化の本質を考えます。
国内外で同時進行する「金高」
国内では、田中貴金属工業が公表する店頭小売価格が1グラム3万円を突破しました。
同時に大阪取引所では、金先物価格が急騰し、値幅制限に達したことで一時的に売買停止(サーキットブレーカー)が発動されています。
国際市場でも同様です。
ロンドン市場の金現物価格は史上最高値を更新し、2025年末から1カ月足らずで3割以上上昇しました。
さらに銀(シルバー)価格にも波及し、金属市場全体が「安全資産」へと資金を引き寄せる動きが鮮明になっています。
投資需要が採掘量の6割に膨張
世界的な需給面から見ても、今回の金高は特異です。
国際調査機関のデータによれば、2025年の投資目的による金需要は前年比8割増となり、年間採掘量の6割に相当する規模にまで拡大しました。
特に目立つのが、金ETFへの資金流入です。
前年まで流出超だったETFは一転して大幅な流入超となり、北米とアジアを中心に投資マネーが集中しました。
中国では宝飾品需要が減少する一方で、地金やコインへの需要が大きく伸びています。
これは「装飾品としての金」から「資産保全手段としての金」への明確な転換を意味します。
FRB内の分裂と米金融政策への不信
金融面での背景も重要です。
直近の米連邦公開市場委員会では政策金利は据え置かれましたが、複数の理事が利下げを主張し、反対票を投じました。
米金融政策の方向性を巡る内部の不一致が、改めて表面化した形です。
市場にとって不確実性は最大のリスク要因です。
金利政策の先行きが読めない状況は、ドル建て資産への信認を揺さぶり、結果として金への資金移動を加速させています。
地政学リスクの質的変化
今回の金高を特徴づけているのは、地政学リスクの「質」です。
国際秩序を前提とした従来型の緊張ではなく、ルールそのものが揺らぐ局面が増えています。
米国を起点とする強硬な外交姿勢や国際法を軽視する行動は、市場に長期的な不安をもたらします。
こうした環境下では、特定の国家や通貨に依存しない資産が選好されやすくなります。
金はその代表例です。
「金が上がった」のではなく「ドルが下がった」
市場関係者の中には、「金価格が上がっているというより、ドルやドル建て資産の価値が下がっている」と指摘する声もあります。
この見方は極めて示唆的です。
金は利息を生まない資産ですが、裏を返せば、誰かの債務でもありません。
通貨や国債と異なり、発行主体の信用に依存しないという特性が、今改めて評価されています。
結論
金価格3万円時代は、一過性のブームではありません。
それは、金融政策への不信、地政学リスクの構造変化、通貨価値への疑念が重なった結果です。
重要なのは、「金を買うべきかどうか」という単純な投資判断ではなく、
なぜ世界の資金が金を選び始めているのか、その理由を理解することです。
金高は、私たちが慣れ親しんできた金融秩序が転換点に差しかかっていることを静かに示しています。
このサインをどう読み取り、資産や生活設計にどう反映させるかが、これから問われていくのでしょう。
参考
・日本経済新聞「金、国内初の3万円台 米政策への懸念色濃く」
・日本経済新聞「投資需要、世界で8割増」
・日本経済新聞「国内先物が一時売買停止 価格急騰で」
・ワールド・ゴールド・カウンシル 2025年金需給統計
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
