人生100年時代と言われる中で、公的年金だけで老後の生活を支え切れるのかという不安は、多くの人が抱いています。
こうした中、老後資金の重要な柱として位置づけられているのがiDeCoです。iDeCoは一般に私的年金と呼ばれますが、その性格は単なる任意の貯蓄制度とは異なります。公的年金の不足を補うため、国が制度として整備した仕組みであり、いわば形を変えた公的年金と捉えることもできます。
本稿では、公的年金の弱点を補うiDeCoの役割と、受け取り方を含めた実践的な活用の考え方について整理します。
公的年金の「穴」を埋める制度としてのiDeCo
かつて、自営業者など第1号被保険者が公的年金を上乗せする手段として主流だったのは国民年金基金でした。国民年金基金は確定給付型であり、将来受け取る年金額があらかじめ決まっている点に安心感があります。
一方で、この仕組みにはインフレへの耐性という弱点があります。物価が上昇しても、給付額が自動的に増えるわけではなく、実質的な価値は目減りしていきます。近年の物価上昇局面では、この点がより意識されるようになりました。
iDeCoは確定拠出型であり、運用成果によって将来の受取額が変わります。価格変動リスクはありますが、長期運用を前提とすることで、インフレに負けにくい資産形成が期待できます。これは、今の時代に合った年金の形だといえるでしょう。
働き方の変化に対応できる柔軟性
iDeCoの大きな特徴の一つが、働き方の変化に対応できる点です。
国民年金基金は第1号被保険者に限定されますが、iDeCoは会社員、専業主婦主夫など立場が変わっても加入を継続できます。転職や独立が珍しくない現代において、キャリアが変わっても一貫して自分の年金を積み上げられることは大きな利点です。
原則60歳まで引き出せないという制約も、見方を変えれば老後資金を確実に確保するための強制力として機能します。
受け取り方で差が出る出口戦略
iDeCoを活用するうえで、運用と同じくらい重要なのが受け取り方です。
受け取り方法には、一時金、年金、併用の3つがありますが、実際には多くの人が一時金を選択しています。その背景には、退職所得控除という大きな非課税枠の存在があります。
一時金として受け取れば、加入期間に応じた控除枠の範囲内であれば税金がかかりません。さらに、一度で課税関係を清算できるため、その後の所得や社会保険料に影響を与えない点も分かりやすい特徴です。
一方、年金形式で受け取る場合は、公的年金等控除を使えるものの、毎年の所得として扱われます。その結果、国民健康保険料や介護保険料が上昇したり、医療費の自己負担割合が変わったりする可能性があります。加えて、受給期間中も口座管理手数料が発生します。
ただし、積立額が退職所得控除の枠を大きく超える場合には、併用という選択肢も現実的です。枠内は一時金、超過分は年金とすることで、税負担を調整できます。
一時金を受け取った後の注意点
まとまった一時金を手にすると、住宅ローンの完済や大規模リフォームに使いたくなるケースがあります。しかし、老後資金の使い道としては慎重な判断が必要です。
高齢期には住環境の変化が起こり得ます。将来的な住み替えや施設入所の可能性を考えると、多額の資金を流動性の低い不動産に固定してしまうことはリスクにもなります。現金を一定程度手元に残すことは、生活の選択肢と心理的な安心につながります。
運用についても、退職後はシンプルさが重要です。商品数を絞り、管理しやすい形で運用を続けることが、高齢期のリスク管理につながります。
現役世代へのメッセージ
現役世代にとって最も重要なのは、できるだけ早くiDeCoを始めることです。
iDeCoの魅力は所得控除による節税効果と、長期加入による退職所得控除額の積み上げにあります。少額からでも構わないため、早く加入し、時間を味方につけることが将来の選択肢を広げます。
結論
公的年金は老後生活の土台ですが、それだけで十分とは言い切れない時代になっています。iDeCoは、その不足を補い、働き方や生き方の変化に対応できる自分年金をつくるための制度です。
運用だけでなく、受け取り方や使い道まで含めて考えることで、老後の自由度と安心感は大きく変わります。人生100年時代、公的年金とiDeCoを組み合わせ、自分自身のライフプランに合った年金設計を考えていくことが重要です。
参考
・日本経済新聞
・iDeCo制度に関する公的資料
・年金制度解説記事
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

