衆院選を前に、株式市場は異例とも言えるほど政治の行方に神経を尖らせています。
背景にあるのは、選挙結果そのものよりも、「選挙後の政権構造が日本株の評価を左右する」という見方です。
とりわけ注目されているのが、株価指数オプション市場に表れた投資家の先読みです。オプションは、将来の値動きに対する市場参加者の確率認識を色濃く反映します。そこから浮かび上がるのは、「株最高値更新が4割」という一見強気でありながら、決して楽観一色ではない市場の本音です。
本稿では、オプション市場が示す選挙後相場の見方を整理したうえで、株高の持続性を左右しかねない企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)改訂の論点について考えていきます。
オプション市場が示す「選挙後シナリオ」
日経平均株価は1月に史上最高値を更新しました。選挙を控えた現在、投資家はその水準をさらに超えられるのか、それとも一服するのかを慎重に見極めています。
オプション市場の分析によれば、投開票日翌週に日経平均が最高値を更新するシナリオは約4割、5万3000円前後での横ばいが4割強、5万円割れは2割未満とされています。
この分布から読み取れるのは、「大きく崩れるとは考えていないが、上値追いにも確信は持てていない」という投資家心理です。
重要なのは、市場が想定しているのが「政権交代」ではなく、「自民党が単独過半数を維持できるかどうか」という点です。単独過半数を確保できれば、政策運営の安定性が評価され、株高継続の条件が整う。一方、過半数割れや不安定な政権運営となれば、最高値更新のシナリオは後退する。市場はその分岐点を冷静に見ています。
天候まで織り込む市場の慎重さ
今回の選挙が例年と異なるのは、真冬の2月に行われる点です。寒波や降雪による投票率低下は、無党派層の動向に影響を与えかねません。
組織票への依存度が相対的に低い現政権にとって、投票率の変動はリスク要因となります。
オプション市場が示す高い変動率は、こうした天候要因を含めた「不確実性の高さ」への備えとも言えます。過去の選挙や自民党総裁選と比べても、今回の警戒度は高水準にあります。
「株安は想定外」という暗黙の前提
興味深いのは、仮に与党が議席を減らし首相交代が起きたとしても、市場は「自民主導の枠組み自体は続く」と見ている点です。
野党勢力だけで過半数を構成する現実性は低く、結果として何らかの形で自民党が政権運営に関与するとの見方が支配的です。
このため、オプション市場では急落シナリオの織り込みが限定的となっています。言い換えれば、日本株はすでに「政治的ショック耐性」を一定程度織り込んだ水準にあると言えます。
株高の鍵を握る企業統治指針の改訂
一方で、見落とせないのが選挙後の政策論争、とりわけ企業統治指針の改訂です。
注目点は、日本企業が抱える潤沢な現預金を、どこまで積極的な投資や株主還元に振り向けるよう求めるのかという点です。
これまでの企業統治改革は、資本効率の改善や株主還元の強化を後押しし、日本株再評価の大きな原動力となってきました。仮にこの流れが維持・強化されれば、株高の追い風となる可能性があります。
しかし、選挙戦では「株主偏重の是正」を掲げる野党の主張も目立ちます。与党内からも、株主重視が行き過ぎたのではないかとの問題提起がなされています。
もし指針改訂において、現行の株主還元水準に否定的なスタンスが明記されるようなことがあれば、市場は敏感に反応するでしょう。
結論
オプション市場が示す「株最高値更新4割」という数字は、強気と慎重さが同居する市場心理を象徴しています。
選挙結果そのものよりも、選挙後にどのような政権構造と政策メッセージが示されるのか。とりわけ企業統治改革の方向性は、日本株の評価を左右する重要な分岐点となります。
日本株は大きく崩れにくいとの見方が広がる一方で、株高が持続するかどうかは「政治の安定」と「ガバナンス改革の一貫性」にかかっています。
選挙はゴールではなく、むしろ市場にとっては次の政策判断を見極めるスタートラインに立つイベントと言えるでしょう。
参考
・日本経済新聞「選挙後に『株最高値』4割 オプション市場が映す票読み」(2026年1月29日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

