ニデック不適切会計問題が示す「株価至上主義」の限界――脱・創業者経営と内部統制の再設計

会計
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ニデックが不適切会計の疑義を受け、東京証券取引所に内部管理体制の改善計画を提出しました。同社はその背景として、創業者である永守重信名誉会長の「過度な株価至上主義」を挙げ、「脱・永守経営」を鮮明にしています。
本稿では、この問題を単なる一企業の不祥事としてではなく、日本企業に共通するガバナンス課題、特に株価重視経営と内部統制の関係という視点から整理します。

■ 不適切会計の背景にあった「株価最優先」の経営姿勢
ニデックの改善計画によれば、不適切会計の根底には、株価を強く意識した経営姿勢がありました。達成困難な利益目標がトップダウンで設定され、目標未達を許容しない企業風土が形成されていたとされています。
その結果、リスクのある資産の評価減の時期を恣意的に調整するなど、会計処理において本来あるべき慎重さが損なわれた疑いが生じました。短期的な利益と株価を最優先する構造が、内部統制の形骸化を招いたといえます。

■ 創業者経営の功罪と「脱・永守経営」の意味
永守氏は、日本を代表する創業経営者であり、強烈なリーダーシップでニデックを世界的企業に育て上げました。一方で、創業者の影響力が長期にわたって続くことで、経営判断が過度に属人的になり、チェック機能が弱まるリスクもあります。
今回の改善計画は、事業計画や中期経営計画の策定を事業本部主導に改めるなど、トップダウン型経営からの転換を明確に打ち出しています。これは単なる人事や体制変更ではなく、経営思想そのものの転換を意味します。

■ 経理・内部統制は「経営のブレーキ役」である
改善計画では、経理部門のあり方の見直しやコンプライアンス研修の充実も盛り込まれました。ここで重要なのは、経理・内部統制部門は利益を作る部署ではなく、経営の暴走を防ぐブレーキ役であるという認識です。
株価や利益目標が強く意識される局面ほど、経理部門が経営陣に対して「できない」「おかしい」と言える体制が不可欠になります。内部統制は形式的なルールではなく、経営判断の質を支える基盤です。

■ 「創業者に責任を押し付ける」だけでは再生しない
専門家からは、永守氏個人に責任を帰するだけでは企業は再生できないとの指摘もあります。創業者に登用され、経営を担ってきた現経営陣の判断や行動も検証されなければ、従業員の納得は得られません。
ガバナンス改革とは、特定の人物を排除することではなく、組織として健全な意思決定ができる仕組みを作ることです。その点で、第三者委員会の報告内容と、それを踏まえた改善計画の修正が今後の焦点となります。

【結論】
ニデックの不適切会計問題は、株価至上主義と内部統制の脆弱さが結びついた典型例といえます。短期的な株価や利益を追い求める経営は、一時的には評価されても、長期的には企業価値を損なうリスクを内包します。
脱・創業者経営とは、創業者の功績を否定することではなく、その影響力を制度と組織で適切に制御することです。今回の事例は、日本企業全体にとって、ガバナンスと会計の在り方を見直す重要な示唆を与えています。

【参考】
日本経済新聞「ニデック不適切会計『株価最優先が背景』改善計画提出」(2026年1月29日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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