最近の為替相場を見ていると、「あれ?円相場ってあまり動いていない?」と思う方もいるかもしれません。確かに、ここ1カ月半ほど、円は1ドル=146~149円の狭いレンジで推移しています。
しかし実は、その裏側ではじわじわと円安の圧力が強まっているのです。この記事では「なぜ円安が進んでいるのか」「今後150円を突破する可能性はあるのか」をわかりやすく整理します。
一見「安定」して見えるドル円相場
現在のドル円相場は、146~149円の間で膠着しています。これは表面的には「安定している」ように見えますが、実際にはドル安と円安が同時に進んでいて、動きが隠れている状態です。
たとえば、猛暑によるエネルギー輸入のためのドル需要がある一方で、米国では利下げ観測が強まってドルが弱含んでいるため、「円安圧力」が目立ちにくいのです。
ドル以外の通貨では「今年最安値」
注目すべきは、円がドル以外の通貨に対して大きく値下がりしていることです。
- 英ポンド:1ポンド=200円台後半と、今年の最安値水準
- ブラジルレアル:1年2カ月ぶりの円安水準
- 豪ドル、メキシコペソ、ユーロ:いずれも円の安値圏
つまり、ドル円だけ見ていると「レンジ内で安定」に見えても、世界的には円の価値が下がり続けているのです。
円が売られやすい3つの理由
なぜ円はここまで売られやすいのでしょうか。主な要因は次の3つです。
- 実質金利が低い
日銀の政策金利から物価上昇率を差し引いた「実質金利」は、主要国の中で最も深いマイナス。利息の面で魅力がなく、円が売られやすい環境です。 - 対米直接投資やデジタル赤字
企業の海外投資やデジタル関連の輸入赤字で円売りが続いています。 - エネルギー輸入のドル需要
日本は資源を海外に頼る国。原油や天然ガスの輸入のために、ドルを買う動きが強いのも円安要因です。
FRBの利下げ観測とドルの動き
米国では、景気の減速を背景に「利下げ観測」が強まっています。市場では2026年末までに政策金利を3%まで引き下げるとの見方もあり、ドル安が進行しました。
ただし、インフレ率は依然として目標の2%を上回っています。専門家は「ここまでの利下げを織り込むのはやや行きすぎ」と指摘しており、短期的にはドル高に振れ戻る可能性もあるのです。
今週の注目イベント:FOMCと日銀会合
週内には米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)と日銀の金融政策決定会合が控えています。
- FRB(米国):パウエル議長がタカ派的(利下げに慎重)な姿勢を見せれば、ドル高・円安に動きやすい
- 日銀(日本):植田総裁の会見中は円安に振れやすい「アノマリー」がある
このタイミング次第では、1ドル=150円突破の可能性も現実味を帯びます。
「悪い円安」は再び注目されるか
昨年7月、円は1ユーロ=173円台まで下落し、日銀が「レートチェック」(介入準備)に動きました。今回もユーロ円はその水準に迫りつつあります。
それでも「悪い円安」と言われにくいのは、ドル円の動きが目立っていないからです。
しかし、もしドル安が反転すれば、覆い隠されていた円安の影響(輸入コスト増、生活費の上昇など)が再びクローズアップされるかもしれません。
まとめ:150円突破は時間の問題?
- ドル円は安定しているように見えて、実は「円安圧力」がじわじわ蓄積
- ドル以外の通貨ではすでに円は「今年最安値」水準
- FRBの利下げ観測や日銀会合の結果次第では、150円突破の可能性も
「円相場は動いていない」と感じる今こそ、裏に潜むリスクに目を向けるべきタイミングかもしれません。
📌参考:日本経済新聞「ドル安が隠す円安圧力」(2025年9月17日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

