成年後見制度の見直しにより、「途中で終了できる後見」が制度上明確になる方向が示されました。この動きは、法定後見だけでなく、将来に備えて契約で準備する任意後見制度にも影響を及ぼします。
任意後見は、本人の意思を最大限尊重する制度として位置づけられてきましたが、今回の制度改正は、その実務的な意味合いをさらに変えていく可能性があります。
任意後見制度の基本的な仕組み
任意後見制度は、判断能力が十分なうちに、将来に備えて後見人を選び、契約を結んでおく制度です。本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで、契約が効力を持ちます。
法定後見と比べ、誰に、どこまで任せるかを事前に決められる点が特徴で、「自己決定を尊重する制度」として評価されてきました。
任意後見も「原則終了できない」制度だった
意外に知られていませんが、任意後見も一度開始すると、原則として途中で終了することは容易ではありません。
判断能力が低下した後は、本人の意思による解除はできず、正当な理由がない限り契約の解除は認められにくい構造でした。そのため、法定後見と同様に「一度始めたら続く制度」という側面を持っていました。
制度改正が任意後見に与える影響
今回の要綱案は、成年後見制度全体を「必要な期間だけ使う制度」へと見直す方向性を示しています。
この考え方が任意後見にも及べば、次のような変化が想定されます。
・任意後見契約の終了が制度上、より柔軟に認められる可能性
・判断能力の回復や状況改善を前提とした運用
・後見開始・終了を含めたライフステージ対応型の制度設計
これにより、任意後見は「最終手段」ではなく、「一時的なセーフティネット」としての性格を強めることになります。
契約内容の重要性が一段と高まる
制度が柔軟になるほど、任意後見契約の内容は重要になります。
特に、
・後見を開始する条件
・後見人の権限の範囲
・将来、後見を終了する場合の考え方
といった点を、契約段階でどこまで具体化できるかが、実務上のポイントになります。
今後は「念のため広く任せる」契約よりも、「必要な範囲に限定した設計」が求められる場面が増えるでしょう。
家族・専門職の関与のあり方も変わる
任意後見は、家族後見や専門職後見との関係でも変化が生じます。
終了が想定される制度になれば、
・家族が一時的に関与し、その後本人に管理を戻す
・専門職後見人が一定期間のみ関与する
といった選択肢も現実的になります。
これは、後見制度を「奪う仕組み」ではなく、「支える仕組み」として再定義する動きといえます。
結論
成年後見制度の見直しは、任意後見制度をより実用的で現実に即した制度へと変える可能性を持っています。
任意後見は、将来の不安に備えるための制度ですが、その備えが過剰な拘束になっては意味がありません。
必要なときに使い、役割を終えたら終了できる――その柔軟性が加わることで、任意後見はより「選ばれる制度」に近づいていくと考えられます。
参考
・日本経済新聞「成年後見制度、終了しやすく 法制審が要綱案」(2026年1月28日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
