中国が金を積み増し、米国債を減らしている――。
この動きは、単なる資産運用の変更ではなく、国家戦略そのものの変化を映し出しています。日本経済新聞の記事では、中国の金準備が公式発表を大きく上回る可能性や、米国債保有の大幅な減少が指摘されました。本稿では、この動きが何を意味するのかを、金融・財政の視点から整理します。
本文
中国の金準備はどこまで増えているのか
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の推計によれば、中国の金準備は最大で約5,500トンに達している可能性があります。これは、政府が公表している水準の倍近くであり、米国に次ぐ世界有数の金保有国となる規模です。
この推計は、中国国内で生産・輸入された金のうち、一定割合が中央銀行に吸収されたと仮定したものですが、仮に誤差を含むとしても、中国が長期的に金を蓄積してきたこと自体は否定できません。
資源を囲い込む「持久戦」型の国家戦略
中国は原油、天然ガス、金、銅、ウラン、レアアースなど、あらゆる資源を対象に探鉱と開発を進める方針を明確にしています。いわゆる「新しい探鉱突破戦略行動」は、米中対立が長期化することを前提とした持久戦略と位置づけられます。
資源分野での人材採用を強化している点からも、短期的な収益よりも、国家の安全保障と自立性を優先している姿勢がうかがえます。
米国債を減らすという選択
一方で、中国は米国債の保有を大きく減らしています。かつては米国債を大量に保有することで、金融面から米国経済と深く結びついていましたが、現在では保有額はピーク時の半分程度にまで低下しました。
米国債を多く保有すれば、金融市場での発言力が高まるという見方もあります。しかし、中国はその道を選ばず、信用リスクや政治リスクを意識した資産配分へと舵を切ったと考えられます。
金という「生まない資産」を選ぶ意味
金は利息も配当も生みません。中央銀行の金庫に保管されているだけでは、経済成長に直接寄与する資産ではありません。それでも中国が金を選ぶ理由は、有事やインフレに対する耐性、そして特定の国家に依存しない価値保存手段である点にあります。
裏を返せば、それは中国にとって魅力的な投資先が限られている現実をも示しています。かつて推進した対外投資や経済圏構想が期待通りの成果を上げなかったことも、実物資産への回帰を後押ししているのでしょう。
結論
中国が「金を買い、米国債を売る」という行動は、短期的な損得を超えた国家戦略の表れです。
それは、米国中心の金融システムへの距離の取り方であり、同時に、将来の不確実性に備えるための防衛的な選択でもあります。金の積み上げは、中国の対抗心と同時に、世界経済の構造変化を冷静に見据えた結果とも言えます。
この動きは、中国だけでなく、各国がどのように外貨準備や資産配分を考えるべきかを問いかける材料になっています。
参考
・日本経済新聞「金を買い、米国債を売る中国」(市場グループ 一目均衡)
・オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)による中国金準備に関する分析レポート
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
