住宅ローン減税は誰を救っているのか――住宅価格高騰時代の制度の現在地

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

住宅価格が高騰する中でも、住宅ローン減税は長年にわたり住宅政策の柱として続いてきました。
住宅を取得した人の税負担を軽減し、持ち家取得を後押しする制度として、多くの人に知られています。
一方で、住宅価格が大きく変化した現在、この制度が「本当に必要な人」を救っているのかという疑問も浮かび上がってきました。
本稿では、住宅ローン減税の仕組みを整理したうえで、この制度が誰にとって有効で、誰にとっては届きにくいのかを考えます。

住宅ローン減税の基本的な仕組み

住宅ローン減税は、住宅取得のために借り入れたローン残高に応じて、一定期間、所得税や住民税から税額控除を行う制度です。
控除額には上限があり、対象となる住宅の床面積や環境性能、世帯の所得水準など、さまざまな要件が設けられています。
この制度の特徴は、「給付」ではなく「税額控除」である点にあります。つまり、納める税金があることが前提となる制度です。

税額控除という前提条件

住宅ローン減税は、一定以上の所得があり、所得税や住民税を納めている人ほど恩恵を受けやすい仕組みです。
一方で、所得が低く、もともと税負担が少ない世帯では、控除を十分に使い切れない場合があります。
住宅取得支援策でありながら、実際には「納税能力のある世帯向けの制度」という性格を持っている点は、見過ごせません。

住宅価格が高いほど有利になる構造

住宅ローン減税は、ローン残高が大きいほど控除額も大きくなります。
そのため、高額な住宅を購入し、多額のローンを組める世帯ほど、制度の恩恵を最大限に受けることになります。
住宅価格が上がるほど減税効果も大きくなるという構造は、価格高騰時代においては矛盾をはらんでいます。
結果として、住宅ローン減税が住宅価格の下支えになっている可能性も否定できません。

借りられる人と借りられない人

住宅ローン減税を利用するには、そもそも住宅ローンを借りられることが前提です。
安定した収入や十分な返済能力が求められるため、非正規雇用や単身世帯、収入が不安定な人は制度の入り口に立つこと自体が難しくなります。
制度は「住宅取得を支援する」ように見えますが、実際には「住宅を取得できる人」を前提に設計されている側面があります。

高騰する住宅市場とのミスマッチ

住宅ローン減税が設計された当初は、住宅価格が比較的安定しており、長期ローンを組んでも完済が見込める前提がありました。
しかし現在は、住宅価格が年収に比べて大きく上昇し、返済期間が長期化する傾向が強まっています。
減税があるからといって、将来の負担が軽くなるわけではなく、むしろ高額な住宅ローンを正当化する材料として使われてしまうリスクもあります。

中古住宅・リフォーム支援への転換は十分か

近年、政府は中古住宅やリフォームを重視する方向へ制度を見直してきました。
環境性能の高い中古住宅を対象に控除期間を延ばすなど、一定の改善は見られます。
ただし、制度の中心が「ローンを組んで購入する人」にある点は変わっていません。
既存住宅の活用や空き家対策という観点から見ると、住宅ローン減税だけでは十分とは言えない状況です。

住宅ローン減税は誰を救っているのか

住宅ローン減税が主に救っているのは、安定した収入があり、高額な住宅ローンを組める世帯です。
一方で、住宅価格の高騰によって住居費に苦しむ層や、住宅取得そのものが難しい層への効果は限定的です。
制度は個々の家計を支援している一方で、住宅市場全体の歪みを是正する役割は担っていません。

結論

住宅ローン減税は、これまで多くの人の住宅取得を支えてきた制度です。
しかし、住宅価格が大きく変化した現在、その役割と限界を冷静に見直す必要があります。
今後の住宅政策では、新築取得を前提とした減税だけでなく、既存住宅の活用や住み続けるための支援へと軸足を移す視点が欠かせません。
住宅ローン減税は「誰を救っているのか」という問いは、これからの住宅政策を考える出発点と言えるでしょう。

参考

・日本経済新聞「住宅価格高騰、対策はある? 空き家有効活用後押しを」
・日本経済新聞「地方自治体は独自対策も」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました