空き家税・空室税はどこまで有効か――住宅価格高騰への切り札になり得るのか

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住宅価格高騰への対策として、「空き家の活用」が重要であることを前稿で整理しました。その具体策として近年注目されているのが、空き家税や空室税といった新たな課税の仕組みです。
使われていない住宅にコストを課すことで、市場への供給を促し、価格上昇を抑えようとする発想ですが、果たしてどこまで有効なのでしょうか。本稿では、その狙いと効果、そして限界について考えます。

なぜ空き家は市場に出てこないのか

空き家が増えているにもかかわらず、売却や賃貸に回らない理由は単純ではありません。
その一因が、固定資産税の軽減措置です。住宅が建っている土地は税負担が抑えられるため、使っていなくても保有し続けた方が有利になる場合があります。
相続で取得した住宅についても、「今は使わないが、将来どうするか決めかねている」という理由で空き家のまま放置されるケースは少なくありません。結果として、潜在的な供給が市場に出てこない構造が続いています。

空き家税・空室税の狙い

空き家税や空室税は、こうした「持ち続けた方が得」という状況を変えることを目的としています。
一定期間、居住実態のない住宅に追加的な税負担を課すことで、売却や賃貸、あるいはリフォームといった行動を促す仕組みです。
自治体によっては、空き家対策を通じて中古住宅の流通を増やし、子育て世代などの流出を防ぐ狙いも掲げています。また、投資目的で購入され、実際には使われていない住宅を抑制する効果も期待されています。

期待される効果――供給を「動かす」力

空き家税・空室税の最大の効果は、住宅の供給を動かす点にあります。
これまで合理的だった「何もしない」という選択にコストが生じれば、所有者の判断は変わりやすくなります。
特に立地条件の良い都市部では、中古住宅が市場に出回ることで、新築への過度な需要集中を和らげ、価格上昇を抑える効果が期待できます。
また、空室のまま保有されているマンション住戸が賃貸市場に出れば、家賃高騰の緩和にもつながる可能性があります。

投機抑制としての側面

空室税は、投機的な住宅取得を抑える手段としても注目されています。
自ら住む予定のない住宅を長期間保有すると税負担が増える仕組みであれば、短期的な値上がり期待だけで購入する動きは抑制されやすくなります。
この点では、住宅を「住むためのもの」として位置づけ直す政策的メッセージを持つ制度とも言えます。

見過ごせない限界

もっとも、空き家税・空室税は万能ではありません。
第一に、税負担を課しても「売りたくても売れない」「貸したくても借り手がいない」住宅は存在します。立地や老朽化の問題を抱える物件では、課税が所有者を追い込むだけに終わる可能性もあります。
第二に、税負担が賃貸家賃に転嫁されるリスクです。空室税の導入が、結果として家賃上昇につながれば、本来の目的と逆の効果を生むことになります。
第三に、居住実態の把握や課税対象の線引きといった、実務面の難しさも無視できません。

税だけでは足りない理由

空き家問題の本質は、税制だけで解決できるものではありません。
リフォーム費用の負担、管理の手間、将来の相続への不安など、所有者が動けない理由は多様です。
そのため、空き家税・空室税は「きっかけ」として位置づけ、リフォーム支援や用途転換の柔軟化、相談体制の整備と組み合わせることが不可欠です。
税による圧力と、動きやすくする支援の両輪があって初めて、住宅は市場に戻ってきます。

結論

空き家税・空室税は、住宅価格高騰への切り札になる可能性を持っていますが、それだけで問題が解決するわけではありません。
重要なのは、住宅を市場に循環させる方向へ行動を変える仕組みをどう作るかです。
空き家税・空室税は、そのための一つの有力なレバーに過ぎません。新築偏重から既存住宅活用へという住宅政策全体の転換と組み合わさってこそ、実効性を持つ制度になると言えるでしょう。

参考

・日本経済新聞「住宅価格高騰、対策はある? 空き家有効活用後押しを」
・日本経済新聞「地方自治体は独自対策も」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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