金価格5000ドル突破が示すもの――安全資産ブームの裏で進む“通貨不信”と金融不安

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金(ゴールド)価格がついに1トロイオンス5000ドルを突破しました。
過去最高値の更新というニュースは、単なる資源価格の話ではなく、世界の投資家が何を恐れ、何に備え始めているのかを映し出しています。

今回の上昇局面では、地政学リスクの高まりと米国の金融・政治情勢への不信が重なり、「安全資産」としての金に資金が集中しました。
この動きは、株式や暗号資産の調整とは異なる、より深い構造変化を示唆しています。


金価格を押し上げた三つの要因

1.地政学リスクの質的変化

今回の金高騰の背景には、単発の紛争リスクではなく、国際秩序そのものへの不安があります。
米国がデンマーク自治領グリーンランドの取得を目指す姿勢を示し、欧州諸国との緊張が高まったことで、NATO内部の亀裂が意識されました。

また、中東情勢では米国が原子力空母を派遣するなど、偶発的な衝突リスクが常に意識される状況です。
市場は「いつ・どこで起きるか分からないリスク」に対し、最も古典的なヘッジ手段である金を選択しました。

2.米金融政策への信認低下

金価格上昇のもう一つの柱は、米金融政策の不透明化です。
今月、FRB議長が刑事捜査の対象となったことが公表され、中央銀行の独立性に疑念が生じました。

金融市場は「利上げ・利下げの方向性」以上に、「政策判断が政治的圧力から自由であるか」を重視します。
その信認が揺らいだ瞬間、ドルへの信頼は相対的に低下し、金への資金移動が進みました。

3.ドル資産からの静かな分散

直近1週間で金価格が約8%上昇した一方、ドル指数は下落しました。
これは、投資家がドルを全面的に売っているというよりも、「保有比率を調整している」ことを意味します。

米国株や米国債を大量に抱える機関投資家にとって、金は“代替通貨”的な役割を果たします。
金利も配当も生まない金が選ばれる局面は、それだけ他の資産に対する不安が強いことの裏返しです。


金高騰は「インフレ期待」だけでは説明できない

これまで金価格は「インフレヘッジ」として語られることが多くありました。
しかし、今回の5000ドル突破は、単なる物価上昇への備えでは説明しきれません。

背景にあるのは、
・通貨価値そのものへの不信
・金融政策の政治化
・国際秩序の不安定化
といった、より構造的な問題です。

金は「何かが起きた後」に買われる資産ではなく、「何かが起きるかもしれない」と感じた時に買われる資産です。
その意味で、今回の急騰は市場の“警戒レベル”が一段引き上げられたサインとも言えます。


結論

金価格5000ドル突破は、バブル的な熱狂というより、世界全体の不確実性が高まった結果と見る方が自然です。
地政学、金融、通貨――それぞれの不安が重なり合ったとき、投資マネーは最終的に「信認に依存しない資産」に向かいます。

今後、金価格がさらに上昇するかどうか以上に重要なのは、
「なぜ金が選ばれているのか」を冷静に読み取ることです。
この動きは、私たちが生きている経済環境の変化を静かに物語っています。


参考

・日本経済新聞「金上昇、5000ドル突破 地政学リスクや米金融混乱を警戒」(2026年1月26日 夕刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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