「年金世代が感じる制度不信」シリーズ・第4回 ひとり暮らし高齢者が制度からこぼれ落ちる瞬間 家族前提で作られてきた社会保障の限界 

FP
ブルー ベージュ ミニマル note ブログアイキャッチ - 1

これまで見てきたように、年金世代が感じる制度不信は、給付額の多寡だけで生じているわけではありません。
今回は、ひとり暮らし高齢者が直面しやすい制度上の「想定外」に焦点を当てます。

配偶者や子どもがいることを前提に組み立てられてきた社会保障制度は、単身で老後を迎える人にとって、思わぬ場面で壁となります。

制度は「家族がいる」ことを前提にしている

年金、医療、介護、住まい。
これらの制度の多くは、無意識のうちに「家族が支える」ことを前提に設計されてきました。

たとえば、

  • 病院への付き添い
  • 緊急時の連絡先
  • 介護が必要になった際の相談窓口

制度の説明書には書かれていなくても、実務の現場では「ご家族はいますか」という問いが最初に出てきます。
この一言で、ひとり暮らし高齢者は、自分が想定外の存在であることを実感することになります。

入院・施設入所で立ちはだかる壁

ひとり暮らし高齢者が最も強い不安を覚えるのが、入院や施設入所の場面です。
保証人や身元引受人を求められるケースは、今なお少なくありません。

制度上は、身寄りがなくても入院や入所ができる仕組みは存在します。
しかし、現実には
「対応できる人がいないと難しい」
という空気が漂う場面もあります。

制度と現場運用の間にあるこのギャップが、制度不信を静かに深めていきます。

「おひとりさま」であることが不利になる感覚

ひとり暮らしであること自体は、特別な選択ではなくなっています。
配偶者と死別した人、結婚しなかった人、子どもを持たなかった人。
理由はさまざまですが、いずれも個人の人生の結果です。

それにもかかわらず、

  • 手続きを頼める人がいない
  • 判断を代行してくれる人がいない
    という理由だけで、制度の利用が難しくなる場面があることは、見過ごせない問題です。

支援制度はあっても「分かりにくい」

ひとり暮らし高齢者向けの支援制度は、存在しないわけではありません。
成年後見制度や見守りサービス、自治体の相談窓口など、仕組みは整いつつあります。

しかし、

  • どこに相談すればよいのか
  • いつ準備すべきなのか
  • 自分が対象になるのか

こうした点が分かりにくく、結果として「何も備えられていない」まま老後を迎えてしまう人も少なくありません。
制度があることと、使えることは別問題です。

女性の単身高齢者が増える現実

特に、女性のひとり暮らし高齢者は今後さらに増えていきます。
平均寿命の長さに加え、未婚率の上昇や配偶者との死別が影響しています。

にもかかわらず、制度設計は依然として「家族がいる」ことを暗黙の前提にしています。
このズレが解消されない限り、年金世代の制度不信は解消されないでしょう。

結論

ひとり暮らし高齢者が感じる制度不信は、制度が冷たいからではありません。
自分の存在が想定されていないと感じる瞬間があるからです。

今後、単身で老後を迎える人が増えることは避けられません。
だからこそ、家族の有無に左右されず、安心して医療や介護、住まいを選べる制度設計が求められます。

次回は、医療と介護は本当に守られているのかという視点から、高額療養費制度や介護制度への信頼と不安の交錯を整理していきます。

参考

日本経済新聞
「多様性 私の視点〉遺族年金ばかり優遇、なぜ」
確定拠出年金アナリスト 大江加代氏(2026年1月26日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました