食品消費税ゼロは、家計支援策として分かりやすい政策です。
しかし、外食産業、とりわけ個人経営や小規模飲食店にとっては、必ずしも歓迎できる制度とは限りません。
「食品はゼロ税率、外食はどうなるのか」
「インボイスや仕入税額控除は維持されるのか」
こうした疑問の裏側には、実務と資金繰りに直結するリスクが潜んでいます。
1.外食は「食品ゼロ」の対象外になる可能性
まず押さえておくべき点は、外食は原則として軽減税率の対象外であるという現行ルールです。
食品消費税ゼロが導入された場合でも、
- 食品販売(スーパー・中食)
- 外食(飲食店)
が同一に扱われるとは限りません。
仮に、
- 食品販売:0%
- 外食:10%(または現行税率維持)
という設計になれば、価格競争上、外食は明確に不利になります。
特に、テイクアウトや中食と競合する業態では、客足減少のリスクが高まります。
2.「仕入は10%、売上は0%」という構造的矛盾
小規模飲食店の仕入は、
- 食材
- 酒類
- 光熱費
- 包装資材
- 厨房設備
など多岐にわたります。
仮に食材部分がゼロ税率になっても、その他の仕入は10%課税のままです。
この場合、
- 売上にかかる消費税は減る
- 仕入時に支払う消費税は残る
という構造になります。
制度設計によっては、仕入税額控除が制限され、
「消費税を預かっていないのに、納税や実質負担が生じる」
という矛盾が発生しかねません。
3.インボイス制度が生む取引上の分断
小規模飲食店では、
- 個人農家
- 地元の小規模業者
- 免税事業者
からの仕入が少なくありません。
インボイス制度下では、適格請求書がなければ仕入税額控除ができません。
食品消費税ゼロが導入されても、
- 酒類
- 包装資材
- 消耗品
などではインボイスの有無が引き続き重要になります。
結果として、
- 免税事業者との取引を見直す
- 仕入先を変更せざるを得ない
といった対応が必要になり、地域密着型の取引関係が壊れるリスクがあります。
4.価格転嫁が難しい現場の現実
理論上は、消費税が下がれば価格も下がるはずです。
しかし、飲食店では、
- 人件費
- 光熱費
- 家賃
といった固定費が重く、価格を下げる余地は限られています。
食品消費税ゼロによって、
「なぜ値下げしないのか」
という消費者の視線が強まる一方で、実際には利益が圧迫されるケースが想定されます。
減税が、値下げ圧力としてのみ作用し、経営改善につながらない点は大きなリスクです。
5.経理・レジ・実務負担の増加
小規模飲食店ほど、制度変更の影響を直接受けます。
具体的には、
- 税率区分の増加
- レジ・会計ソフトの更新
- 従業員への説明
といった対応が必要になります。
大手チェーンと異なり、これらを専任で行う人材がいないため、
店主自身の負担が増える点は見逃せません。
結論
食品消費税減税は、外食・小規模飲食店にとって「一方的な追い風」とは言えません。
むしろ、
- 価格競争力の低下
- 仕入税額控除の制限
- インボイス対応の複雑化
- 実務負担の増加
といった複合的なリスクを伴います。
制度は「消費者目線」で設計されがちですが、実際に制度を支えるのは事業者です。
外食産業、とりわけ小規模飲食店の現場を無視した減税は、経営体力の弱い事業者から順に追い込む結果になりかねません。
参考
・日本経済新聞「食品減税『物価に効かず』56% 日経世論調査」
・日本経済新聞「首相、減税『26年度めざす』」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

