金利を知る(中)家計にとってのメリットとデメリット

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前回は、金利の基本と上昇の背景について整理しました。短期金利は日銀の政策によって、長期金利は国債市場での取引によって決まるという仕組みを紹介しましたね。では、その金利の上昇は私たちの家計にとってどんな意味を持つのでしょうか?

金利が上がることには「よい面」と「悪い面」の両方があります。今回は、身近な家計の視点からメリットとデメリットを具体的に見ていきましょう。


住宅ローンへの影響

デメリット:返済負担の増加

住宅ローンは長期にわたる大きな借金です。特に 変動金利型 を選んでいる人は、金利の動きに応じて返済額が変わります。金利が上昇すれば、毎月の返済額も増えてしまいます。

例を挙げましょう。
3,000万円を35年ローン、金利0.5%で借りていた場合、毎月の返済額はおよそ77,000円です。もし金利が1.0%に上がると、返済額はおよそ85,000円へ。年間で約10万円の負担増となります。

長期固定金利を選んでいる人も、新規に借りる場合は金利上昇が反映されるため、借入のハードルが高くなります。

メリット:将来の金利上昇を見越して動ける

一方で、低金利時代に固定金利で借りている人は「借金の条件を固定したまま、金利が上昇しても影響を受けない」というメリットがあります。
また、これから住宅購入を考えている人は「金利が上昇基調にある」という前提を踏まえて計画できるので、無理のない借入額を考えるきっかけになります。


預金・貯蓄への影響

メリット:預金金利の上昇

長年「金利がつかない」に等しかった普通預金や定期預金。金利上昇は、預金者にとっては朗報です。

例えば、1,000万円を0.001%で預けていても年間利息はわずか100円。しかし金利が0.2%になれば、年間2万円の利息がつきます。まだ大きな額ではありませんが、「預金にも少しは利息がつく時代が戻る」ことは家計のプラス要因です。

デメリット:実質利息はインフレに負ける可能性も

ただし、インフレが進んで物価が2%上がっているのに、預金金利が0.2%では差し引きマイナスです。名目金利が上がっても、物価の伸びに追いつかなければ実質的な資産価値は減る点に注意が必要です。


投資への影響

デメリット:株式市場への逆風

金利が上がると企業がお金を借りるコストが高くなり、設備投資や成長戦略に制約がかかります。結果的に企業の利益が減り、株価の下押し要因となります。

また、投資家の視点でも「国債の利回りが上がるなら、リスクを取って株を買わなくてもいい」と考える人が増えます。安全資産である国債が魅力を増すことで、株式市場に資金が流れにくくなるのです。

メリット:債券投資の妙味が復活

長らく低金利でほとんど利息を期待できなかった債券投資ですが、金利上昇局面では「新規に買う債券の利回りが高くなる」というメリットがあります。特に個人向け国債(変動10年など)は、金利が上がれば利息も上がるため、インフレ対策の選択肢として再注目されています。


生活コスト全般への影響

金利の上昇は、企業の資金調達コストを上げ、結果としてモノやサービスの価格に転嫁される可能性があります。例えば、自動車ローンや教育ローンなどの金利も上がりやすく、「借金で何かを買う」には不利になります。

一方で、「貯める」には追い風。預金や国債が再び資産形成の手段として見直されるのは、金利上昇期ならではの流れです。


メリットとデメリットを整理

最後に簡単にまとめておきましょう。

メリット

  • 預金金利の上昇で、貯蓄にも利息がつく
  • 国債や債券投資が有力な選択肢に
  • 低金利時代に固定で借りた人は返済条件が有利に

デメリット

  • 住宅ローンや各種ローンの返済額が増える
  • 株式市場が調整局面を迎える可能性
  • インフレが進めば、実質的な資産価値は減少

まとめ

金利の上昇は、家計にとって「痛み」と「恩恵」の両方をもたらします。
借金をしている人には負担増、貯蓄や国債を持つ人には利息増。つまり、「借りる」か「貯める」かによって感じ方が変わるのです。

次回はさらに踏み込んで、**「金利上昇局面で家計はどう備えるべきか」**について具体的な行動のヒントを考えてみたいと思います。


📌参考:日本経済新聞(2025年9月17日付夕刊)マネー相談「黄金堂パーラー」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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