AI相談は、年金世代にとって非常に便利な存在です。
時間を選ばず質問でき、制度の概要や一般的な考え方を整理してくれる。
「人に聞くほどでもない」と感じる内容でも、気軽に確認できます。
しかし、お金の話には、AIに決して決めさせてはいけない領域があります。
それは、単なる知識や計算ではなく、
人生の取り返しがつかない判断と直結する部分です。
本稿では、年金世代がAI相談を使う際に、
絶対に“判断を委ねてはいけないお金の話”を具体的に整理します。
1.老後資金の「取り崩しペース」
年金世代にとって最大のテーマの一つが、老後資金の取り崩しです。
AI相談では、
「平均寿命」「一般的な生活費」「想定利回り」
といった前提を置いたモデルケースが示されます。
しかし、
・実際の健康状態
・医療費や介護費の不確実性
・住まいの状況
これらは数値化しきれません。
AIが示す「このペースなら大丈夫」という結論は、
あくまで条件付きの仮説です。
実際の人生に当てはめる判断は、決してAIに任せてはいけません。
2.高齢期の投資・運用判断
「まだ余裕資金があるから運用した方がいいか」
これは、AI相談で最も聞かれやすい質問の一つです。
AIは、
・長期分散
・期待リターン
・インフレ対策
といった一般論を整理してくれます。
しかし年金世代の投資判断は、
「損を取り戻す時間がない」という前提が抜け落ちると致命的です。
値下がりに耐えられるか。
途中で資金が必要にならないか。
精神的な負担に耐えられるか。
これらは数式では判断できません。
投資の是非そのものを、AIに決めさせるべきではありません。
3.年金の繰下げ・繰上げ判断
年金の受給開始時期は、AI相談と相性が良さそうに見えるテーマです。
実際、損益分岐点や増額率の計算はAIが得意です。
しかし、
・寿命の見通し
・働き方
・配偶者との関係
・遺族年金との兼ね合い
こうした要素は、単純な計算では決まりません。
「得か損か」ではなく、
「自分がどの生活を選びたいか」という価値判断が中心になります。
この判断をAIに委ねるのは危険です。
4.相続・贈与の進め方
相続や贈与は、年金世代にとって避けて通れないテーマです。
AI相談では、
・制度の概要
・一般的な節税手法
・よくあるパターン
が整理されます。
しかし、
家族関係は制度よりも複雑です。
・誰に、いつ、どれだけ渡すか
・不公平感が生まれないか
・争いの火種にならないか
こうした判断は、AIにはできません。
特に「節税になるから」という理由だけで進める判断は、
後々の家族関係を壊すリスクがあります。
5.住まいの処分・住み替え判断
持ち家を売るか、貸すか、住み続けるか。
これは、金銭面と感情面が強く絡む判断です。
AI相談では、
・市場価格
・利回り
・一般的な老後モデル
が示されます。
しかし、
・体力の低下
・地域とのつながり
・将来の介護動線
といった要素は、本人にしか判断できません。
住まいの選択をAIに委ねるのは、本末転倒です。
6.「もう大丈夫」という判断
最も危険なのは、
「AIで調べたから、もう大丈夫だろう」
という結論そのものです。
AI相談は、
判断材料を集めるための道具です。
結論を出すための存在ではありません。
特に年金世代では、
一度の判断ミスが、その後の生活に長く影響します。
AIで整理し、人で確認する。
この一線を越えないことが重要です。
7.巨大AIプラットフォームとの距離感
現在、AI相談の多くは
OpenAI、Google、Microsoft
といった巨大IT企業の基盤上にあります。
利便性が高い一方で、
・特定の行動を促しやすい設計
・商品やサービスへの誘導
が含まれる可能性もあります。
年金世代は、
「便利だから正しい」
と短絡的に判断しない慎重さが求められます。
結論
AI相談は、年金世代にとって非常に有効な道具です。
しかし、決して決めてはいけないお金の話があることを忘れてはいけません。
老後資金、投資、年金、相続、住まい。
これらはすべて、
数値では割り切れない人生の選択です。
AIで整理し、
人で決める。
この原則を守ることが、
年金世代がAI時代に安心して生きるための最低条件と言えるでしょう。
参考
・日本経済新聞
「閲覧ソフト、AI企業も参入 『秘書』機能で新たな競争 グーグルの牙城なお堅く」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
