公益信託と遺言・家族信託・公益法人の選び分け――公益目的の資産活用をどう設計するか

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高齢期や相続を見据えた資産設計において、「社会に還元したい」という思いをどう形にするかは重要なテーマです。その際の選択肢として、公益信託、遺言による寄附、家族信託、公益法人の設立など、複数の制度が存在します。

それぞれは似ているようで、制度の性質や向いている場面は大きく異なります。本稿では、公益信託を軸に、遺言・家族信託・公益法人との違いを整理し、どの制度を選ぶべきかの判断軸を示します。

公益信託と遺言の選び分け

遺言は、死亡時に効力が発生する制度であり、財産の帰属先を指定するための手段です。公益目的での活用としては、特定の団体や事業に対する寄附を遺言で定める方法があります。

これに対し、公益信託は生前に設定し、運用を開始できる点が大きな違いです。
本人が存命中から公益目的が実現され、その内容や使途を自ら確認できる点に特徴があります。

死後の意思表示で足りる場合には遺言が適していますが、生きている間から関与したい、使われ方を見届けたい場合には、公益信託の方が適しています。

公益信託と家族信託の違い

家族信託は、主に財産管理や承継を目的とした制度であり、受益者は本人や家族であることが一般的です。認知症対策や相続対策として活用されるケースが多く見られます。

一方、公益信託は、受益の対象が特定の個人ではなく、公益そのものである点が決定的に異なります。
家族のための資産管理を目的とする場合には家族信託、社会への還元を目的とする場合には公益信託という整理になります。

両者は役割が異なり、代替関係ではなく、目的に応じた使い分けが必要です。

公益信託と公益法人の選び分け

公益法人は、法人格を持ち、継続的・組織的に公益事業を行う制度です。活動規模が大きく、長期的な事業展開を想定している場合には、公益法人が適しています。

これに対し、公益信託は法人を設立せず、信託契約を基礎として公益目的を実現します。
特定の目的や期間に限定した公益活動を行いたい場合や、組織運営の負担を抑えたい場合には、公益信託の方が現実的です。

「事業を行う主体」を作りたいのか、「資産の使い道」を設計したいのかという視点が、両者を選び分ける鍵となります。

税務面から見た制度選択の視点

税務上の取扱いは、制度選択において重要な要素の一つですが、それだけで判断すべきではありません。
公益信託と公益法人については、令和8年4月以降、譲渡所得税等の非課税特例などで共通の取扱いが拡大します。

一方、遺言や家族信託は、公益目的に対する直接的な税制優遇を受ける制度ではありません。
税制は結果として付随するものであり、制度の目的と合致しているかどうかを優先して検討する必要があります。

制度を組み合わせるという考え方

実務上は、これらの制度を単独で使うとは限りません。
例えば、生活資金や家族承継には家族信託を用い、社会還元部分について公益信託を設定し、最終的な調整を遺言で行うといった組み合わせも考えられます。

重要なのは、それぞれの制度の役割を混同せず、目的別に整理することです。
制度を競わせるのではなく、使い分けるという発想が求められます。

結論

公益信託、遺言、家族信託、公益法人は、いずれも資産の行き先を設計するための制度ですが、その役割と適用場面は大きく異なります。
公益信託は、明確な公益目的を、生前から実現したい場合に適した制度です。

どの制度が優れているかではなく、自身の価値観、資産状況、ライフステージに合っているかを基準に選び分けることが、後悔のない資産設計につながります。

参考

・税のしるべ 2026年1月19日
 公益信託に財産を拠出した場合における譲渡所得税等の非課税の特例のあらまし


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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