公益目的での寄附は、社会貢献の一つとして長く制度的に支援されてきました。とりわけ、土地や有価証券などの資産を寄附する場合には、譲渡所得課税が大きな壁となることがあります。
この点について、所得税法では一定の要件を満たす寄附について、譲渡所得税等を非課税とする特例が設けられています。
令和8年4月からは、新たに創設される公益信託制度に対応する形で、この非課税特例の対象が見直されます。国税庁は令和8年1月9日、「公益信託に財産を拠出した場合における譲渡所得税等の非課税の特例のあらまし」を公表しました。
本稿では、その内容を整理し、新制度の全体像と実務上の留意点を解説します。
公益信託制度創設と税制見直しの背景
これまで、公益目的での寄附先としては、公益社団法人や公益財団法人などの公益法人等が中心でした。一方、信託を活用した柔軟な公益活動の枠組みとして、公益信託制度の見直しが進められてきました。
令和8年4月からは、新たな公益信託制度がスタートし、公益信託の受託者が公益法人等に準じた位置付けとなります。これに伴い、公益信託に対して財産を拠出した場合にも、一定の要件のもとで譲渡所得税等の非課税特例が適用されることになりました。
譲渡所得税等の非課税特例の概要
今回公表された「あらまし」では、公益信託への寄附に係る非課税特例について、次の7項目に分けて説明がなされています。
1つ目は制度の概要です。
公益法人等に対して資産を寄附した場合、その資産の譲渡に伴って生じる所得について、一定の承認を受けることで所得税を非課税とする仕組みであることが示されています。
2つ目は公益法人等の範囲です。
令和8年4月以降は、従来の公益法人等に加え、公益信託の受託者が新たに対象に含まれる点が重要な変更点です。
3つ目が、一般特例と承認特例の区分です。
この区分は実務上、最も重要なポイントの一つとなります。
一般特例と承認特例の違い
一般特例は、公益法人等に財産を寄附した場合に、その寄附が公益の増進に著しく寄与することなどの要件を満たし、非課税承認を受けたときに適用されます。
寄附行為そのものの公益性が重視される仕組みであり、個別の内容について審査が行われます。
一方、承認特例は、承認特例対象法人等に財産を寄附した場合に適用される制度です。この場合、寄附者が公益信託の受託者の親族等に該当しないことなど、人的関係に関する要件が中心となります。
あらかじめ要件を満たす法人等が指定されている点が、一般特例との大きな違いです。
非課税承認を受けるための手続
非課税特例を適用するためには、寄附をしただけでは足りず、所定の非課税承認を受ける必要があります。
承認申請書の提出や、寄附の内容・公益性を確認するための書類提出が求められます。
公益信託の受託者に対する寄附については、承認申請書の記載方法や必要書類の詳細が、今後、国税庁ホームページで公表される予定とされています。実務にあたっては、最新の公表資料を確認することが欠かせません。
承認要件と承認取消しのリスク
一般特例・承認特例それぞれについて、承認要件が定められています。
これらの要件を満たさない場合は、そもそも非課税承認が得られないだけでなく、承認後であっても要件違反が判明した場合には、非課税承認が取り消されることがあります。
承認が取り消された場合には、遡って課税が行われる可能性があるため、寄附後の資産管理や公益目的の継続性についても注意が必要です。
結論
令和8年4月から始まる公益信託制度と、それに対応した譲渡所得税等の非課税特例の見直しは、公益目的での資産活用の選択肢を広げるものといえます。一方で、非課税の適用には事前の承認や厳格な要件確認が不可欠であり、制度を正しく理解した上での対応が求められます。
今後公表される申請書様式や添付書類の内容を踏まえつつ、寄附者・受託者双方にとって適切な制度活用を検討していくことが重要です。
参考
・税のしるべ 2026年1月19日
公益信託に財産を拠出した場合における譲渡所得税等の非課税の特例のあらまし
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
