年金世代が「お金を払ってもいい相談・払いたくない相談」の線引き――有料相談が定着するための現実的条件

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

年金世代にとって「有料相談」は、もはや特別なものではなくなりつつあります。
一方で、すべての相談に対してお金を払うことが受け入れられるわけではありません。
「これは有料でも納得できる」「これは無料でなければ困る」――この線引きを誤ると、有料相談は社会に定着しません。
では、年金世代はどのような相談に価値を感じ、どのような相談に対しては対価を払いたくないと考えているのでしょうか。

年金世代は「情報」にはお金を払わない

まず明確なのは、制度の説明や一般的な情報提供に対して、年金世代はお金を払いたがらないという点です。
年金制度の概要、医療保険や介護保険の仕組み、税制の基本的な説明などは、「本来、公的に示されるべき情報」と受け止められています。
これらは、役所や金融機関の窓口、パンフレット、最近ではインターネットでも入手可能であり、「知識そのもの」に料金を支払う感覚は乏しいのが実情です。

「自分の場合どうなるか」に価値が生まれる

一方で、年金世代が明確に価値を感じるのは、「自分の場合はどうなるのか」を整理してもらえる相談です。
年金額、預貯金、持ち家の有無、家族構成、健康状態などを前提にした将来の見通しは、一般論では代替できません。
この個別性こそが、有料相談の核心です。
一般的な説明では不安が解消されないからこそ、「自分専用の整理」に対しては対価を支払う余地が生まれます。

お金を払ってもいい相談①:老後資金の全体設計

年金世代が比較的抵抗なくお金を払えるのが、老後資金の全体設計です。
いつまで、どの程度の生活費が必要か。医療や介護にどれくらい備えるべきか。配偶者が亡くなった場合はどうなるか。
こうした問いに対し、「大丈夫かどうか」を数字で示してもらえることには、大きな価値があります。
これは投資助言とは異なり、「生活の見通しを立てるサービス」として受け止められやすい分野です。

お金を払ってもいい相談②:相続・贈与・資産の出口

年金世代にとって、資産形成以上に関心が高いのが「資産の出口」です。
相続で子どもが揉めないか、生前贈与はいつ・いくらが適切か、不動産をどう扱うか。
これらは失敗した場合の影響が大きく、「間違えたくない」という心理が強く働きます。
そのため、第三者の専門的な視点から整理してもらえる相談には、費用をかける合理性があります。

お金を払ってもいい相談③:判断に迷う局面での伴走

年金世代は、「正解を教えてほしい」というより、「判断を一緒に整理してほしい」と感じる場面が多くあります。
住宅を売るかどうか、施設に入るタイミング、子への支援の程度など、正解が一つではないテーマです。
こうした局面での伴走型の相談は、単なる情報提供では代替できず、有料でも納得されやすい領域です。

払いたくない相談①:金融商品の勧誘と一体の相談

逆に、年金世代が最も警戒するのが、金融商品の勧誘と一体になった相談です。
「相談は無料だが、最後に商品を勧められる」という構図に慣れすぎた結果、有料であっても販売色が強ければ不信感が先に立ちます。
相談料を払っている以上、「売られないこと」が前提条件になります。

払いたくない相談②:結論ありきのアドバイス

年金世代は、「この商品が最適です」「この方法が正解です」と断定されることに違和感を覚えがちです。
人生の後半では、価値観や優先順位が人によって大きく異なるため、結論を押し付けられること自体がストレスになります。
選択肢を整理し、判断材料を示すことが期待されており、その枠を超える助言には対価を感じにくくなります。

線引きの本質は「安心が残るかどうか」

年金世代にとって、有料相談の価値は「得をしたか」ではなく、「安心が残ったか」で判断されます。
相談後に、生活の見通しが以前よりはっきりし、漠然とした不安が軽くなっていれば、費用への納得感は高まります。
逆に、不安が残ったままであれば、どれだけ安価でも「高い」と感じられてしまいます。

結論

年金世代が「お金を払ってもいい相談」と「払いたくない相談」の線引きは明確です。
一般論や情報提供ではなく、自分の人生に引き直してもらえるかどうか。
商品販売ではなく、生活全体を見てくれるかどうか。
この線を守れる相談サービスであれば、有料であっても受け入れられる余地は十分にあります。
有料相談が根付くかどうかは、価格ではなく、「何に対して料金を受け取るのか」を社会が共有できるかにかかっていると考えます。

参考

・日本経済新聞「生活・投資相談の体制を整備せよ」
・金融庁 高齢期の資産形成・管理に関する資料
・総務省 高齢者世帯の家計・消費動向


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました