2026年に入っても円安基調が続いています。1ドル160円に迫る水準は、生活者の実感としても、輸入物価やエネルギー価格を通じて重くのしかかっています。
一方で、為替市場の中では「ここから円高に転じる可能性は本当にないのか」という問いも、静かに浮上し始めています。
短期的には円安材料が目立つなかで、中期・構造的な視点から円を見直すと、見過ごされがちな上昇シナリオが存在します。本稿では、円相場の周期性、円安圧力の変化、そして原発再稼働という要素を軸に、円の「隠れた上昇シナリオ」を整理します。
円相場にみられる「5年周期」という視点
円相場には、経験則として語られる「5年周期説」があります。年間の騰落でみると、4~5年単位で上昇局面と下落局面が入れ替わるというものです。
実際に振り返ると、2016年から2020年にかけては円高が続き、その後2021年から2024年までは円安局面が続きました。相場は直線的に動くものではなく、行き過ぎたところで反転し、大きく蛇行するように推移してきました。
2025年は、こうした流れの中で久しぶりに円が上昇した年でもあります。この動きを起点として考えると、2025年以降、数年単位で円高方向への修正が進む可能性は、必ずしも突飛な話ではありません。
これまでの円安圧力は本当に続くのか
ここ数年、円安の主因として挙げられてきたのは、個人投資家による海外資産投資の拡大や、機関投資家・生命保険会社による外債投資です。
新NISAの開始以降、「日本からの恒常的な円売り」が語られることも増えました。
しかし、これらの動きはすでに一定程度進み切った側面もあります。海外投資への資金シフトは急拡大期を過ぎ、フローとしては落ち着き始めているとの見方もあります。
円安要因が「増え続ける前提」で語られてきた点については、冷静な再点検が必要な局面に入っているといえます。
円高に転じる「きっかけ」はどこにあるのか
円が反転上昇するためには、十分条件となる「きっかけ」が必要です。
典型的には、日本株の下落局面で海外投資家が為替ヘッジを外し、円買いが生じるケースが挙げられます。
ただし、本稿で注目したいのは、より構造的な要因です。それが、エネルギー政策、特に原子力発電所の再稼働です。
原発再稼働と円相場の関係
東日本大震災以降、日本は火力発電への依存度を高め、その結果としてエネルギー輸入額が大きく膨らみました。これは、貿易赤字の拡大を通じて、長年にわたり円安圧力として作用してきました。
政府は、将来的に電源構成における原発比率を引き上げる方針を掲げています。仮にこの目標に近づけば、エネルギー輸入額は大幅に減少し、貿易収支は改善します。
年間で見れば、円売り圧力が数兆円規模で縮小する可能性もあります。
原発再稼働は安全性や地域合意など、課題が多い政策分野です。しかし、政治的なスタンスが変化し、再稼働を容認する政党が増えれば、現実的な選択肢として前進する余地はあります。
この点は、金融政策や金利差とは異なるルートから、円を下支えする要因になり得ます。
中期では円高、長期ではどうか
もっとも、注意すべき点もあります。
過去のデータをみると、円高局面が5年続いたとしても、その後の円安局面の方が規模としては大きく、10年単位では結果的に円安が進んできました。
超長期で円が持続的に評価されるためには、日本経済の成長率そのものが問われます。
生産性の向上、投資の活性化、人口減少下での成長モデルの構築といった課題を伴わなければ、円高は一時的な調整にとどまる可能性があります。
結論
足元の円相場は、依然として円安観測が優勢です。しかし、相場を中期・構造的に眺めると、円高に転じるための条件は少しずつ整いつつあります。
5年周期という時間軸、円安圧力のピークアウト、そして原発再稼働による貿易収支の改善。これらは、すぐに結果が出る材料ではありませんが、確実に円を支える要素です。
円相場は、常に「今」の延長線だけで動くわけではありません。
2026年の政治日程とエネルギー政策は、円にとって重要な分岐点になる可能性があります。
参考
・日本経済新聞「〈ポジション〉円、隠れた上昇シナリオ 相場の流れに5年周期」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

